エセ保守論客の「礼儀作法本」に潜む「しきたりファシズム」の醜悪さ

竹田恒泰

AFP=時事  PHOTO/YOSHIKAZU TSUNO

竹田恒泰氏の「礼儀作法本」

 こんにちは。ドリーです。保守の作品を一冊づつ取り上げ、その身勝手な歴史認識を紹介する企画。今年も、冬が近づき、終わりが迫ってきましたが、皆さんは如何お過ごしですか。  本企画では第1回第2回で、それぞれ百田尚樹杉田水脈両氏の歴史観を紹介してきましたが、第三回目となる今回は保守の中でも一際有名な竹田恒泰氏を取り上げたいと思います。  もはや彼についての説明は不要でしょう。虎ノ門ニュースの論客であり、旧皇族の宮家に生まれ、その華麗な経歴を武器に、天皇の歴史に関する優れた本を執筆した人物です。  いわゆる保守の人ですが、元皇族という肩書きもあって、その伝統文化に対する思い入れは、保守の中でも随一。その浮世離れした本気度を凝縮した本が、この『日本の礼儀作法〜宮家のおしえ〜』です。今日はこの本を皆さんに御紹介したいと思います。  まずは簡単に内容を説明しましょう。  現代の日本人が日本の古き良き伝統的な礼儀を忘れてしまっている。その事を憂いた元皇族の竹田恒泰が若干上から目線で、日本の古き良き礼儀作法を教えとく……的な内容になっています。  しかし内容は、かなりシュールで、現実離れしていて、皆さんも驚かれることだと思います。

竹田氏の提唱する日本人として正しい食事作法とは

 先ず竹田恒泰は、冒頭、食べ物に対する敬意の気持ちを日本人は失ったと嘆き、食べ物への感謝を表すためには、必ず「食前感謝の儀」が必要だと主張されます。で、食べ物への感謝を心から表す実践的な礼儀作法が竹田氏いわく、以下のようなものだそうです。  まず、1、静座(心を落ち着けて座る)   ふむふむ。  2、一拝(一度、礼よりもやや深く頭を下げる動作をする)  3、一拍手(一度、拍手を打つ)  ここまでは良い。しかし次が、問題です。  4、歌奏上(食前感謝の和歌を詠む)    ---------う、歌!!!!!!??  竹田恒泰氏いわく日本古来の和歌を歌わなければ、食への感謝の気持ちは表れないんだそうな。なんかめんどくせぇよとここで匙を投げる人も居るかもしれません。が、待ってください。これだけには留まらないのです。食べ終えると、再び、今度は「食後感謝の儀」を実施するのだと言う。それがこれです。  1、端座(正しく座る)  2、一拝(一度、礼よりもやや深く頭を下げる動作をする)  3、一拍手(一度、拍手を打つ)  4、歌奏上(食後感謝の和歌を詠む)   また歌かよ……と思ってしまうが、毎食一人で竹田氏がコレを実施してるんだとしたら頭を下げるしかありません。    さらにさらに。これだけには留まりません。竹田恒泰氏は、日本人の基本的なマナーとして「お辞儀の礼儀作法」も必要だと主張する。竹田恒泰氏いわく「一般礼式では、礼は上半身を傾ける角度によって三つの種類に分けられる」らしい。  角度!!?   竹田氏いわく「15度の礼を「会釈」、30度の礼を「敬礼」、45度の礼を「最敬礼」だと言う(p73より)。  小学4年の算数の授業の様に、いちいち頭下げる時に、竹田氏は分度器で測っているのかな。と読んでいて腹立ってくるのですが、ここまでは、まだ笑って済ませるレベルです。だが後半になって、私はこの本に、ある強烈な不快感を覚えたのです。
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「美しい日本語」を標榜する竹田氏の日本語
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