猛威を振るう投資詐欺、「ポンジ・スキーム」の悪辣手法

週刊SPA!記者もコロリ。詐欺師の巧みな話術とは?

ポンジスキーム

写真はイメージです

 いたるところで被害事例が見られるポンジ・スキームだが、SPA!編集部も例外ではなかった。 「月利8%で元本保証、為替で運用してくれるという話に引っかかり、300万円を持ち逃げされました。このことは妻にもまだ言えずにいます……」  力なくそう語るのは、SPA!記者のS。日頃から取材でも詐欺事案を扱っている彼をも手玉に取るほど、詐欺師のプレゼンは人間心理につけ込むものだった。 「詐欺師とは飲み屋で知り合ったのですが、金払いがよく外車も複数台保有していました。当時は個人投資家と聞いていたので本当にトレードがうまいと思ってしまったんです。あるときお茶をしていると、彼はおもむろにノートパソコンを開きトレードを始めた。横で見ているとものの15分くらいで800万円の利益を上げていたんです。タネを明かせばこの詐欺師は“トレードで勝っている動画”を再生していただけで、実際はトレードなんてしていなかったのですが、まんまと信じてしまった」  敏腕トレーダーを装った詐欺師はSを勘違いさせたうえで、こう囁いた。 「親身な雰囲気で『普段はしないんだけど、君とはウマが合う。運用してあげてもいいよ』と言われました。『娘さんの教育資金もいるだろう』とか本当に僕のことを考えてくれている体でくるんです。元本保証、月利8%で半年間のロック、預り証も出すという条件を出されて……実はこのとき、編集部の同僚に相談していて、『絶対やめろ』と言われたんです。でも僕はすでに舞い上がっていて、止まることができなかった」  配当が支払われたのは最初の1か月のみ。姿を消した詐欺師の顔をSが再び目にしたのは、別件で逮捕されたニュースだった。

世間を騒がせたポンジ・スキーム実例集

▼テキシア ダイヤモンド投資による運用を名目に、毎月3%の配当金を支払うと謳い、’13年から4年間にわたり1万3000人から460億円の出資金を集めた。「いつでも可能」と約束していた出金が滞ったことで被害届が相次ぎ、’19年に摘発。元宮司の代表ら10人が逮捕された。 ▼D9クラブ ブラジル発の世界的ポンジ。日本では’16年末頃から「日利1%」と喧伝。お台場のヒルトンで行われたイベントでは布川敏和が司会を務めた。その直後に「ハッキングされて資金が盗難された」として出金を拒絶。国内の被害総額は700億円ともいわれている。 ▼HANA倶楽部 社債や株式への投資による運用を謳い、金融庁に未登録のまま出資を募集。会報誌には現役首相夫人だった安倍昭恵を登場させるなどし、’18年に破綻するまでの5年余りで女性を中心に1万人から300億円を集めた。破綻時には18万円ほどの資金しか残っていなかった。 ▼エル・アンド・ジー ’01年頃から流行。ショッピングモールでの商品購入に使用可能な疑似通貨である「円天」を購入すれば、年利100%の配当が行われると謳い、約5万人から1000億円を超える資金を集めた。’07年に出資法違反で摘発され、会長は逮捕。懲役18年の実刑判決となった。 【奥窪優木氏】 ’80年、愛媛県生まれ。上智大学卒業後、中国に渡り現地取材を行う。’08年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などへの寄稿を中心に活動。 【Z李氏】 地下経済、アングラ事情に精通するコラムニスト。座右の銘は「給我一個機会,譲我在再一次証明自己」。Twitterは@Kiss0fthedrag0n <取材・文/片波 誠 奥窪優木>
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