京都のラブホテルは何をウリにしている? 都心と郊外の違いからコロナ禍の影響まで <ラブホテルの地理学>

コロナ禍が変えたラブホのセールスポイント

 最後に、コロナ禍以降の変化について述べておきたい。昨年まで京都には多くの外国人観光客が訪れていたが、コロナ禍によって京都の観光地はまったく正反対の状況に陥った。「夜の街」への警戒心はラブホテルからも客足を遠のかせ、休業する店舗も続出した。さらに、風営法に基づき営業している、いわゆる4号営業のラブホテルが持続化給付金の給付対象から外されたことも追い打ちをかけた。これらの変化は、広告文にも現れている。 コロナ禍以降のラブホの広告文  一目瞭然。「コロナ」-「ウイルス」-「感染」-「対策」というワードが出現している。よくある感染対策の文言と変わらないものも多いが、各店舗のHPを見ると、感染対策をしているという旨だけでなく、ラブホテル“だからこそ”「安心」であるというロジックでのアピールがされているものもいくつか見受けられる。お互いの健康を把握できるパートナーとだけ接触し、スタッフや他の来店者と接触することはない。本来ならば来店者のプライバシーのためのシステムが、感染対策としても有効というわけだ。  さらに、ラブホテルの中にはリモートワーク向けのサービスを行っているところもある。京都南ICにある「ホテルゆめや」では、フリーWi-Fiの完備や充電対応といった従来のサービスに加え、PCの無料貸し出しをすることで新たなニーズへの対応を行っている。また、「HOTELロータスオリエンタル京都南店」では「オンライン飲み会プラン」や「ホテルでNO密飲み会プラン」など新しいプランが打ち出されている。「落書きもできるフェイスガードを無料貸し出し!シュールさがSNS受けするかも?」(公式HPより)とSNS受けまで考える周到さ(?)も憎らしい。「新しい生活様式」はラブホテルをも変えようとしている。  今回は京都のラブホテルについて、都心と郊外の違いを中心に扱った。料金形態や広告の出し方など、そこにはいくつもの違いが存在する。  いずれにしても、コロナ禍による影響が甚大なのは間違いない。ラブホテルに対して適切な経済支援がなされ、そして一刻も早くコロナ禍が収まってくれることを願わずにはいられない。 <取材・文・撮影・図版作成/重永瞬(都商研)>
しげながしゅん●Twitter ID;@Naga_Kyoto>。京都大学文学部地理学専修在籍。京都大学地理学研究会第7代会長。京都・観光文化検定試験1級を史上最年少(20歳)で合格。フジテレビのクイズ番組『99人の壁』鉄道旅SP出演でも話題になった。著書に『大阪市天王寺区生玉町におけるラブホテル街の形成と変容 歴史編』 (志学社論文叢書) 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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