在留資格のない外国人に対して、初のワン・ストップ相談会
相談のためのテントが10以上も並んでいいる
11月1日午前10時。埼玉県のJR川口駅前のキュポ・ラ広場で、生活に困窮している外国人を支援するための相談会が実施された。特に、在留資格のない、あるいは失ったり付与されなかったりした外国人を対象にしたものだ。
筆者が現場に着いたのは12時ころだったが、驚いた。相談のためのテント・ブースが10以上も並び、広場全体が相談会場となっていたからだ。外国人の数はざっと数えて100人以上いる。
筆者はてっきり、テントが1つか2つだけのこぢんまりとした医療相談や生活相談を想像していた。今回の相談会は、そういった医療相談、生活相談、法律相談、現金や物資など、必要な支援がその場所で一度に済む「ワン・ストップ」相談会だったのだ。
在留資格のない外国人に対してのワン・ストップ相談会は全国的にもこれが初めてとのこと。相談会の運営主体は「クルド人の生存権を守る実行委員会」で、発起人のひとりである市民団体「クルドを知る会」の松澤秀延さんによると、これだけ大規模な相談会にかけた準備期間は「1か月もなかった」という。松澤さんがここ最近抱いていた憤りと焦りが早急な実現へと導いたのだ。
埼玉県川口市や蕨市には、トルコ国籍のクルド人が約2000人住むといわれている。クルド人の文化を日本に伝える一般社団法人「日本クルド文化協会」によると、そのうちの3割以上が「仮放免」状態に置かれている。
「仮放免」とは、在留資格のない外国人が「母国に送還される準備が整うまで、就労禁止をルールに日本に滞在できる措置」のことだ。就労禁止だけでも生存権を脅かすものだが、健康保険にも加入できないため、自由診療となるため10割から20割以上という高額な費用を払わねばならない。結局、病院に行かずに症状を悪化させる人は少なくない。
それでも、川口市や蕨市にはクルド人コミュニティがあることで、仕事がある人は収入のない家族を支える文化もある。
また、「クルドを知る会」は2007年の設立以来、在日クルド人と日本人の相互理解の促進に努めてきた。彼らの窮状を知るにつれ、その活動は彼らの生活相談や生活支援、入管の収容施設に収容されているクルド人の面会活動などの支援活動にも広げてきた。特に、生活困窮者には食料品や民間の支援金を配布する支援活動も実施している。
こうした共助と民間支援で、クルド人たちはなんとか生活ができていた。
ところが、今年に入ってからのコロナ禍で彼らの仕事(主に解体業や建設業)が激減する。さらに、仮放免者には10万円の特別給付金は支給されない。そしてもうすぐ冬がやってくるが、コロナが再燃してますます仕事が減っている。
このままでは彼らは死んでしまう。その恐れから「クルドを知る会」は関係団体と話し合いを重ね、急きょ今回の相談会の実現にこぎつけたのだ。参加団体は、クルド難民弁護団、反貧困ネットワーク、NPO法人ほっとプラス、埼玉県民主医療機関連合会、移住者と連携する全国ネットワーク貧困対策PT、ふーどばんく埼玉など14団体だ。
川口市でのイベントということもあり、来訪者はクルド人が多かった。来訪者はまず受付テントで自身の境遇を説明し、その内容によって各ブースに割り振られていた。
だが相談内容がどうあれ、相談者に共通しているのは「お金がない」ということだ。ある男性の財布には数百円しかなかった。相談表にも所持金が数千円、ゼロ、さらには借金30万円などの数字が記載されていた。家賃滞納1か月や3か月という人もざらで、大家やまた貸ししている知人から立ち退き要請を受けている人もいた。
会場には、120世帯の約300人が来場。なかにはお金がないため、何kmも歩いて来場した人もいた。多くの人が明日食べるものの心配をしていた。