世界中から称賛されるも本国で上映中止。『パピチャ 未来へのランウェイ』で描かれた、現実にあった女性弾圧

世界中から称賛を浴びるも、本国アルジェリアでは上映中止に

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© 2019 HIGH SEA PRODUCTION – THE INK CONNECTION – TAYDA FILM – SCOPE PICTURES – TRIBUS P FILMS – JOUR2FETE – CREAMINAL – CALESON – CADC

 10月30日より、フランス・アルジェリア・ベルギー・カタール合作の映画『パピチャ 未来へのランウェイ』が公開されている。  アルジェリアで全編の撮影が行われた本作は、2019年9月に予定されていた同国内でのプレミア上映が急遽中止された。当初は内部事情によるものと発表されていたが、製作陣は大統領選挙を12月に控えていた政府からの検閲による圧力だと主張した。  そのためアカデミー賞国際長編映画賞の選出が危ぶまれていたが、最終的には特例措置としてアルジェリア代表と認められるに至った。その他にも、第72回カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」に出品され、第45回セザール賞で新人監督賞と有望若手女優賞の2冠に輝くなど、高い評価を獲得している。
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© 2019 HIGH SEA PRODUCTION – THE INK CONNECTION – TAYDA FILM – SCOPE PICTURES – TRIBUS P FILMS – JOUR2FETE – CREAMINAL – CALESON – CADC

 それでも、いまだにアルジェリア本国では公開の見込みが立たないのだという。世界中から称賛を浴びているのに関わらず、本国では上映中止の憂き目にあっている本作が、どのような問題を提示しているのか。そのことを映画の魅力と合わせて紹介しよう。

弾圧に抵抗し、夢を諦めずに邁進していく女性の姿

 1990年代のアルジェリア。大学生のネジュマは、ナイトクラブでドレスのオーダーメイドの依頼を受ける秘密の商売をしていた。彼女は行きつけの雑貨屋にも自作の服を持参し商品として並べ、その服の販売で得た収入は自分の店を出すための貯蓄にするなどして、ファッションデザイナーになる夢へ向かって突き進んでいた。  だが、首都アルジェでは武装した過激派のイスラム主義勢力の台頭によりテロが頻発しており、ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭や身体を覆う布)の着用を強制するポスターがいたるところに貼られていた。あまつさえ、大学の講義中に全身を黒いヴェールに身を包んだ女性たちが突然乱入し、「外国語の授業は必要ない」と訴えることすらある。それでもネジュマはファッションへの情熱を燃やし続けていたが、彼女をある決定的な悲劇が襲うことになる。
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 ネジュマが肌を美しく見せるファッションを手がけることは、そのままイスラム原理主義からの迫害の対象となる。禁止を強要されるだけならまだしも、テロ活動が日常化しているその場所では、それは命の危険にまでおよぶ行為になってしまう。それでも、ネジュマは悲劇をきっかけにして、ファッションショーを行うことを決意する。  そこからの道程も簡単なものではなく、ネジュマはさらなる危機にも遭遇する。それでも知恵と勇気、友人たちとの支え合いや友情をもってして、少しずつ前に進んでいく。過酷な状況でも、弾圧に抵抗し、夢を諦めずにいる女性の姿は、尊く美しいものと感じられるだろう。
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15万人もの命が失われた“暗黒の10年”
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