「仕事の前にコカインで目を覚ます」…欧州の依存症患者と話して感じたこと

 相次ぐ芸能人の薬物汚染などで注目されている依存症。ようやく日本でも治療法や社会全体の取り組みが重視されるようになってきたが、欧米に比べるとまだまだ世間の依存症患者への視線は冷たいのが現実だ。

日常生活でも耳にする依存症問題

苦しんでいるイメージ画像

photo via Pexels

 当サイトでは過去にも欧州のドラッグ事情などを取り上げてきたが、筆者が滞在しているポーランドでは、取材以外の日常生活でもドラッグなどに依存している/していた人の話を聞く機会は少なくない。  こう聞くと「やはり、欧米は薬物乱用が激しい」と片付けてしまいがちだが、注目していただきたいのは、依存症問題について話すことに対してオープンな土壌ができていることである。  もちろん、当の本人たちは軽い気持ちで話しているわけではない。それぞれ羞恥心や後悔を抱えているのだが、「カミングアウト」できることが治療の第一歩であり、依存症再発防止になっていることは間違いないだろう。  日本ではいまだに薬物などの依存症が芸能人による「スキャンダル」で、一般人には関係のない話と考えられているフシがあるが、それは問題を直視していないことも原因のひとつなのではないかと思う。決して日本が「クリーン」だからではないのだ。

日本も決して他人事ではない

 例えば、厚生労働省の「現在の薬物乱用の状況」によると、大麻取締法の検挙者数は12年に1692人であるのに対して17年は3218人、コカインの検挙者数は12年に66人であるのに対して17年は185人となっている。つまり、5年間で大麻は約2倍コカインは約3倍にも検挙者数が急増しているのだ。 (参照:厚生労働省)  さらにコロナウイルス発生後は在宅勤務が普及したことで、アルコールの「隠れ依存症」「巣ごもりアルコール依存症」の危険性なども指摘されている。  また、路上や公共交通機関、居酒屋などで泥酔、嘔吐している大人を見たことがないという読者の方は恐らくいないだろう。欧米では反対にこうした光景は滅多に見ることがない。  日本は決してアルコールや薬物の依存症と無縁の国ではない。社会全体、そして我々一人一人の捉え方が異なるだけなのだ。
次のページ 
覚せい剤使用に耐えかねて家族にカミングアウト
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会