中学校の教科書に採用された日本語プログラミング言語「なでしこ」。母国語でプログラミングができることの「意味」

「なでしこ」が掲載された教育図書の「技術」

「なでしこ」が掲載された教育図書の「技術」(「教育図書」より)

日本語プログラミング言語「なでしこ」が中学校の教科書に採用

 9月のことだが、日本語プログラミング言語「なでしこ」が、中学校の教科書に採用というニュースが入ってきた(窓の杜なでしこ)。中学の技術の教科書に、日本語化されたスクラッチ(Scratch)とともに「なでしこ」が掲載されるそうだ。  個人的には「おおー、すごいな酒徳さん」と思った(「なでしこ」の開発者は、酒徳峰章氏、ハンドルネームはクジラ飛行机)。  しかし、ネットでのプログラマーの反応は色々とあった。その中には「もっと実際の開発現場で利用されるプログラミング言語の方がよいのではないか」といった意見も見られた。  しかし、学校でプログラムを学ぶ全員が、開発者になるのではない。普段見慣れた言葉でプログラムが書いてあるだけで、ずいぶんと気持ちが楽になる人も多いはずだ。母国語でプログラムを学べるのは有意義なことだと思う。  今回私が、素直に賞賛の感想を持ったのには理由がある。日本語で、プログラミング的なものを表現する取り組みを、開発者の酒徳氏が古くから取り組んでいたことを、私が個人的に知っていたからだ。

日本語プログラミング言語「なでしこ」とは

 酒徳氏と知り合った切っ掛けは、財団法人インタ-ネット協会が主催していた、オンラインソフトウェア大賞だ。この賞の2001年の入賞者として、『めもりーくりーなー』を開発していた私と、『テキスト音楽「サクラ」』を開発していた酒徳氏(当時は山本姓)が入っていた(財団法人インタ-ネット協会)。当時住んでいた家が近かったこともあり、互いの家を訪問したりした。  『テキスト音楽「サクラ」』は、1999年に公開が開始されたソフトウェアだ。ソフトウェアのエディタに「ドレミ」と書けば、そのまま演奏してくれる。『テキスト音楽「サクラ」』は、日本語でドレミファソラシドの音階を書くことで、音楽を奏でられるDTM(Desktop Music)用のソフトだ。  身近にある日本語で、コンピューターへの入力の橋渡しをしていた酒徳氏は、2001年に日本語プログラミング言語「ひまわり」を公開した。そして、日本語プログラミング言語の取り組みを進めていく。  酒徳氏は、この方面の開発を進めるために、2004年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)に申し込んで「日本語プログラミング言語の開発」というテーマで採択される(IPA)。この成果として、2004年10月に「なでしこ」のベータ版が発表された(IPAIPA)  その後、2005年、2006年にも未踏ソフトウェア創造事業で、酒徳氏はWeb開発向けのプログラミング開発環境で採択される(IPAIPA)。こちらでも日本語でプログラムが書けるようになっていた。  こうした活動の延長として、現在の「なでしこ」が存在している。この取り組みは継続的に続いており、2020年1月5日には、なでしこ15周年記念サイトもオープンしている。  こちらのサイトには、利用者のアンケートも掲載されている。利用者の年齢は、40代が38%、30代が25%になっている。利用している場所は、趣味が43%で、仕事が43%。日常の自動化処理などで、業務の効率化に用いられている。  意外と仕事に用いられている、と思う人も多いだろう。何かプログラミング言語を学んでいれば、日々の作業をこなすのに役に立つというのが分かる。
次のページ 
プログラミングの言語ハードル
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会