いまだ蔓延る「新型コロナウイルス人工説」。世界の医師・研究者の見解は?

自然は究極のバイオテロリスト

 米国立アレルギー感染症研究所のデビッド・モレンス博士らは「STAT」に、「自然は究極のバイオテロリストです。私たちが最も恐れるべきものです。かつては自然界にしか存在しなかった未知のウイルスが、2019年末までに中国の大都市に静かに侵入し、その後急速に世界中に広がりました。  洞窟の中で逆さまに眠る翼のある哺乳類(コウモリ)との人間の相互作用によってもたらされる脅威を、テロリストグループや核武装国の脅威と比較するのは奇妙に思えるかもしれません。ただし、科学的証拠、そして新型コロナウイルスに対処するための私たちの日々の経験は、パンデミックがこれらの危険と同等かそれを超える可能性があります」と言います。(※11)  モレンス博士らの2020年9月の「米国熱帯医学と衛生学ジャーナル」の報告によると、2007年、コロナウイルスを研究している科学者は次のように警告しました。「キクガシラコウモリに、SARSのようなウイルスが大量に蓄積するのは時限爆弾です。SARSやその他の新しいウイルスの再興の可能性を無視してはならない」。残念ながら、予言が実現するまで無視されました。(※12)  報告によると、コロナウイルスの巨大な貯水池は、世界中に分布する何百ものコウモリです。19,000を超える動物(主に非ヒト霊長類、コウモリ、およびげっ歯類)を対象とした20か国の研究では、コロナウイルスの98%以上が、コウモリから検出されました。そして、無作為に調査した12,000匹を超えるコウモリのうち、ほぼ9%が、1つ以上のコロナウイルスに感染していました。  過去15年間で、科学者らは、ラオス、ミャンマー、ベトナム、および中国南部と南西部の一部を含む広大な隣接地域でコウモリコロナウイルスの「ホットスポット」を特定しました。また、コウモリのコロナウイルスが人間に感染するリスクとなる、洞窟の探索とコウモリの観光、生きた動物を屠殺する生鮮市場、野生生物のサプライチェーン、土地の管理する方法や環境の変動など、多くの人間と動物の相互作用も特定しました  これらの取り組みにより、コロナウイルスの生態系、貯水池の宿主、宿主間のウイルスの移動、ウイルスの進化、およびヒトや他の哺乳類への感染のリスクについて多くのことが明らかになりました。  中東呼吸器症候群(MERS)と重症急性呼吸器症候群(SARS)の研究している科学者は、多くのコウモリコロナウイルスは、人間や他の動物に感染するのに適していることを発見しました。これは、コウモリコロナウイルスが遺伝的に変化し、コウモリから人間に宿主を切り替えることを可能にします。  新型コロナウイルスのゲノムは、野生のコウモリに見られるものと96%類似しています。ただし、コウモリから人間にどのように宿主が切りかわったのか、完全には理解されていません。博士らは、中国や他のホットスポットの国で働く科学者と共同で、コウモリコロナウイルスの監視と研究を拡大することが緊急に必要であると主張します。  ところで近年、世界中にナショナリズムが高まっています。新型コロナウイルス感染症の流行で、渡航制限、ワクチン開発の競争などにより、さらに状況が悪化しています。私は、このような状況で国際協力がうまくできるか不安を感じます。自然は究極のバイオテロリスト、このままでは、すぐに次のウイルス感染症の流行がはじまる可能性があります。 (※11)Coming to terms with the real bioterrorist behind Covid-19: nature (※12)The Origin of COVID-19 and Why It Matters <文/大西睦子>
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)、『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)、『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)がある。
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