ホワイトハウスに何が起きたのか? 反科学主義的なボスを抱えて幽霊屋敷へと陥った合衆国政権中枢

バイデン氏は無事なのか

 ここで不安になるのがバイデン氏の安否です。時系列からトランプ氏は、9月29日頃から感染力を持っていた可能性があります。大統領選TV討論会では、共和党陣営、トランプファミリーは場内で義務であるマスクを外し、トランプ氏はバイデン氏へ不規則発言で怒鳴りつけ唾をかけ続けていたわけで、たいへんに危険な状態でした。バイデン氏とトランプ氏の社会的距離は15feet(約4.5m)で、討論中はノーマスクでしたので決して安全とは言えませんでした。不幸中の幸いで、お互いとても嫌っている者同士、握手やハグどころかエルボウ・バンプ*もなかったためか、10月2日の朝夕二回のPCR検査以降、頻回PCR検査を行っているバイデン氏は、現時点で検査陰性が続いています。 〈*感染防ぐビジネスマナー、握手の代わりに肘タッチ? 2020/02/19 WSJ〉  適切に運用すれば、きわめて高感度で高精度のPCR検査ですが、9月29日の暴露で10月2日(金)の検査では不感期間の可能性があり、検査陰性はあてになりません。幸い、10月4日(日)夜、その後も頻回検査で陽性は見られておらず、概ね無事と考えて良いと思います*。バイデン氏は、検査陽性の場合は必ず発表すると約束しています。 〈*バイデン氏、マスクなど予防徹底呼び掛け-トランプ氏コロナ感染受け 2020/10/03 Bloomberg〉  COVID-19は、感染から発病までの潜伏期間が数十日に及ぶ症例もあるとのことで、濃厚接触者の検疫期間である14日間は十分な警戒を要します。バイデン氏は、非常に用心深く、常にマスクを着用し、社会的距離も常にとってきています。TV討論会でもノーマスクですが、常に15feetの距離をとり*、途中から戦術変更で顔をカメラに向け続けていたためか濃厚接触者という指摘を筆者は見ていません。 〈*President Trump has COVID-19: A timeline of events 2020/10/02 update 10/06 USA Today〉  バイデン陣営によると、トランプ氏の検査陽性についてバイデン氏らが知ったのは、報道によってであり、トランプ陣営からの連絡はなかったとのことです。余りの不誠実さにバイデン陣営は怒り心頭とのことですし、筆者も開いた口が塞がりません。  ここまで、ホープ・ヒックス氏の検査陽性から一挙に事態が進んだトランプ氏のCOVID-19感染と発病、ホワイトハウスと共和党を中心とした大規模なアウトブレイクについて論じました。今回はここまでとして、次回はトランプ氏の病状の推移について論じます。 ◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ28:白い家1 <文/牧田寛>
Twitter ID:@BB45_Colorado まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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