かつて韓国へ輸入されていた大同江ビール(宮塚コリア研究所付設資料室にて)
およそ10年ぶりに「大同江ビール」が韓国へ輸出されると話題となるも、すぐにこの話はなかったように消滅した。
8月6日、韓国統一省の李仁栄統一相が、「世界食糧計画(WFP)」を通じて北朝鮮へ1000万ドル(約10億5000万円)の人道支援を発表。同時に南北での物々交換計画も明らかにした。
韓国人を驚愕させたのは、南北物々交換をする北朝鮮側の取引先と6月末にすでに契約済みであったことだ。
李仁栄統一相は7月末に就任する前から南北での物々交換へ言及しており、韓国からは医療品、北朝鮮からは白頭山の水などを交換する構想をマスメディアを通じて発言していた。
しかし、6月末に契約済みだったということは、統一相就任前にはすでに契約済みだったということになる。結果的に、韓国からは砂糖、北朝鮮からは大同江ビールを物々交換することになった。余談だが、砂糖は、南北ともに生産量ゼロで輸入に依存している。
過去形なのは、この計画は発表から
2週間足らずで事実上の白紙撤回となったからだ。白紙撤回の理由は韓国人からの反発ではなく、契約先の
「開城高麗人参貿易会社」が国連の経済制裁の対象リストに載っていたからだ。
そもそも、なぜ物々交換だったかと言えば、
国連制裁に抵触しないための最大限の配慮だと報じられている。貨幣を介さない物々交換であれば、北朝鮮の資金源となることを防ぐことができる。また、運ぶ手段も陸路でのトラック輸送は国連制裁にひっかかることから、空路を検討。しかし、空路はアメリカの独自制裁に抵触する可能性があった。米企業であるボーイング機も使用できない。
韓国統一省が最後の手段として編み出したのは、第3国へ依頼しての海上輸送だ。中国の海運会社業への依頼が有力視された。
中国朝鮮族で韓国貿易にも携わる経営者は、李仁栄統一相が就任早々、功を焦ったのではないか。国内で国情(国家情報院)などと連携すれば容易に分かったはずと話す。
本来、国家情報院は、北朝鮮に対するインテリジェンス活動に広く従事する組織であるが、文在寅政権となり、無力化されて機能不全に陥っているとされる。それでも、契約前に確認すれば、国連制裁対象リストに載っているかくらいはすぐに調べられたはずだ。以上の点からも文在寅政権の錯綜ぶりを感じさせる。