菅政権による日本学術会議への人事介入は近代社会の破壊行為。著述家が官邸前で単身抗議のハンストを始めたワケ

「声をあげる者が誰一人残っていない」未来が来る

 7年半の間、菅野氏が目の当たりにしてきた弾圧。それは、菅野氏自身や、その他の政権批判であり人種差別批判的な論者が何度もくらっているSNSのアカウント凍結や、世間的にはさして知名度が高くない菅野氏のスキャンダルを何時間も晒し続けるツイッターの「トレンド」であり、現在もハンスト中の菅野氏を揶揄するような「飯テロ」行為のハッシュタグとなった「#菅野完を殺すな」が、その拡散規模では考えられない「トレンド入り」を果たす嫌がらせのような事象だ。  あの時、属人的な考えだけで、その問題の本質を敢えて見ようともしなかった行為のツケがいまになって回ってきたとも言えるのだ。 「ただ、僕にはいまそれをもってして『ザマみろ』などとは言いませんし、言っている暇もないほど緊急事態だと思っています。『一国の政権が、学問の自由に、あからさまに介入した』のです。学術に関与するもの、言論に関与するもの、いや、社会の各層あらゆる人々が、この暴挙に対する痛烈な批判の声をあげ、徹底して、この政権と戦うべき問題です。そうでなければ、ニーメラーの格言『…そして、彼らが私を攻撃したとき 私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった』という未来が、遠からずやってくるはずです」

野党議員の失言は記者総出で批判も、菅の暴挙に沈黙するWebメディア

 さすがにその危機感も波及し、野党議員は追及を行い、大手新聞も報じ始め、WEBメディアもハフポストなどが報じ始めた。しかし、それでもなお、テレビメディアは沈黙を続けるか、報じるものの問題点をきちんと指摘していない。  また、野党議員である石垣のりこ氏の失言を報じ、所属記者がSNSの個人アカウントでそれを積極拡散までしていたBuzzFeed JAPANは、本稿執筆時点で菅政権の日本学術会議人事介入問題について、はたちこうた氏による署名記事が2日に公開されているが、その記事もいち早く過去答弁との矛盾を報じた優れた記事にも関わらず、本稿執筆時点ではトップページでも下の方に埋没し、続報がない。また、石垣発言のときのような複数記者による積極的な「拡散活動」は見られない。(※10/4日20時:当初、記事が見られないとしておりましたが、はたち氏の記事があるとの指摘を受けて修正いたしました) 「そういうことなんですよ。そもそも学者もメディアも戦い方を忘れてしまっている。日本学術会議の、今回の6人以外の人は何をしているのか? 主義主張思想信条に関係なく、今回の一件は『学問の自由』への侵害であり危機感を持つべきものなのに、誰1人として辞職を表明もしない。本来であれば、『日本学術会議のメンバーが総辞職し、抗議の意思を示す』のがもっとも有効な抗議だと思っています。そして、メディアも、BuzzFeedのような露骨なメディアはさておき、何が問題かも明確にわからないから、両論併記や伝聞だけの記事で、自社の意見がない記事が多い。これでは止められない」  香港民主化運動への中国共産党による弾圧は、本サイトも何度も批判してきた。この件はリベラル陣営だけでなく、日本の右派も批判的だったはずだ。しかし、今回の菅政権のことについては、右派陣営は沈黙どころかむしろ相変わらずのリベラル叩きで喜んでいる始末だ。 「先ほども言いましたが、政治が学問に介入し、しかも人事権行使でそれを行うことは、本質的に、中国共産党政府が、今現在、香港の知識人や大学人に行っている弾圧と全く同じなんです」
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