「#橋下徹をテレビに出すな」が訴えていること。ネトウヨ化する老親への危機感<史的ルッキズム研究9>

ネトウヨ化する老親

老親

(Adobe Stock)

 いまツイッターで話題になっている新しいデモ「#橋本徹をテレビに出すな」について。  私はいま49歳、実家の母は79歳になります。老親をもつ世代にとって心配の種はたくさんありますが、近年新たに浮上してきた問題は、老親の“ネトウヨ化”です。知らず知らずのうちに親がネトウヨになり、まるで別人になってしまったように会話ができなくなってしまう、という現象です。原因として考えられているのは、インターネットとテレビです。  インターネットに関する研究で明らかにされた一つに、“エコーチェンバー効果”というものがあります。エコーチェンバーとは、閉鎖した空間のなかで同じ見解を持つ者だけが集まることで、異論が消失し、一つの見解だけが強化・増幅していってしまうことです。SNSのコミュニティーは気の合う者同士の集まりですから、異論や反論が排除されやすく、同意見の者だけで固まってしまいがちです。  また、インターネット上ではフェイクニュースが日々生み出されていて、ネトウヨが喜びそうな嘘が蔓延しています。情報の真偽を検証する体力がなければ、気持ちのいい嘘に呑み込まれてしまいます。SNSがもっているこうした構造が、催眠商法やカルト団体に似たあやうい社会空間を生み出すということなのです。

ネットに適応できなかった”ネット右翼”

 さてここであらためて考えておきたいのは、“ネトウヨ”、“ネット右翼”という呼称です。これはネット上で右翼的な主張をするある人物が、自分はネット右翼だと自称したことから始まりました。この種の人々は匿名掲示板などで政治論争をしかけ、主張が論破されると荒らし行為に及ぶというはなはだ迷惑な存在になっていきます。  そして主張内容ではなくその振る舞いの横着さから、疎ましがられる存在になりました。ここにはねじれがあって、彼らは主観的にはネット時代の右翼なのですが、客観的にはネット時代のコミュニケーションに適応できなかった前時代的な人々なのです。匿名掲示板やツイッターといった新しいコミュニケーション文化が、右翼思想の未熟さ厄介さを表面化させたと言えるでしょう。ネット右翼とは、客観的には“ネット未満右翼”であり、“ネット以前の人々”なのです。

煽情的なワイドショーが持つエコーチェンバー効果

 私見では、“ネット右翼”を生み出したのはインターネットメディアではなく、テレビです。というのも、エコーチェンバー現象というのは、インターネットメディアから始まった新しい現象ではなく、インターネット以前のメディア文化から持ち込まれたものだからです。その直近の親に当たるのはテレビ報道です。  テレビは、インターネットが普及する以前から、エコーチェンバー効果を活用していました。報道番組の娯楽化・ワイドショー化は、視聴率を稼ぐ手法として定着していきました。90年代のワイドショーはオウム真理教報道で視聴率を稼ぎ、2000年代には「北朝鮮」報道で視聴率を稼ぎ、いずれも多角的な視点を排除した一面的で扇情的な報道姿勢がとられました。オウム真理教や「北朝鮮」を非難することは絶対的な正義であり、多角的な分析など必要ないと考えられたのです。異論や反論を許さない高圧的で扇情的な態度が、テレビ報道の標準になっていきます。テレビはエコーチェンバー効果を活用して視聴率を稼いでいったのです。
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テレビの大型化と環境汚染
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