「胎内記憶」の池川明氏やUFOと会話できるジャーナリスト……
HOHの問題は、たびたびメディアで大きく取り上げられてきた。90年代の「TOSHI洗脳騒動」、2004年の児童虐待事件、2010年のTOSHI脱会。その度に、テレビや雑誌やネットメディアで大きく何度も報じられた。最後にメディアで注目されたのは、2014年のTOSHIの告白本『
洗脳 地獄の12年からの生還』(講談社)が発刊だ。
それから6年。当時の中高生等であればともかく、大人であれば忘れるには少々早すぎる年数ではないだろうか。しかしHOHやMASAYA氏が名称を変えたこともあってか、すでにMASAYA氏には様々な「著名人」等が群がってきている。
その一人が、子供が母親の胎内にいた頃の記憶を持って生まれてくるという持論で知られる
産婦人科医・池川明氏だ。日頃、虐待される子供は虐待されるために生まれてきたのだと主張していることから、虐待の正当化や容認にあたるのではないかとの批判も浴びている。
〈参照:
「胎内記憶」医師の登壇中止でも立教大スピリチュアル・シンポが不思議でいっぱいだった件〉
その池川氏は昨年、MASAYA氏の
MARTH TVでMASAYA氏と対談。こんなふうにMASAYA氏を持ち上げてみせた。
〈MARTHさんの音楽って、まさにその、愛をものすごく意識してらっしゃる音楽なので、これを妊婦さんが聴くことによって、意図せず、全然知らなかった人も、赤ちゃんにそういう愛を伝えることができるんじゃないか〉(動画より)
池川氏はスピリチュアル系の人々の間でそれなりに人気を博している人物。それがこのように公然とMASAYA氏をヨイショすれば、池川ファンがMASAYA氏やHOH関連団体に接触し被害を受ける可能性すら出てくる。
今年7月には、
政治評論家・中丸薫氏が同じYouTubeチャンネルでMASAYA氏と対談した。
〈私、あるときにね。UFOからのメッセージがあってね。天橋立に来てくださいって言われてね。何で天橋立に?と思いながらも、言うとおりに行ったんですね。(略)なぜ天橋立に行かなければいけないのですか?って言いましたら、あなたがアマテラスだったときのものがそこに随分見当たるのでね。それを含めて、いろんなことが分かるから、行ってくださいと言って、まぁでも太陽の会の人たちと何人かで行ったんですね〉(動画中の中丸氏の発言)
太陽の会とは、「新しい時代の人間復興ルネッサンスを日本から」などと謳う、中丸氏が総裁を務める団体と思われる。UFOがどうのとか、中丸氏がかつてアマテラスだったとか、MASAYA氏云々抜きでも十分首を傾げたくなる。そして終盤では、やはりMASAYA氏を持ち上げてみせた。
〈素晴らしかったと思うわ。これからね、一緒に世界平和を目指して。いろんなことを言って〉(同)
他にも
医師の池田和子氏、作家の藤原定明氏、弁護士の秋山佳胤氏、元自衛官・池田整治氏、日本の心をつたえる会代表・小名木善行氏など、様々な人々がMASAYA氏との対談に登場している。スピリチュアル方面の人々ばかりだが、それぞれの主宰団体名等に「日本の」「日本から」などを謳う
保守系スピリチュアリストの顔ぶれもちらほら。
池田氏や小名木氏などは、古事記や聖書を用いた「日本スゴイ」的な歴史観を唱える人物だ。たとえば池田氏は、聖書における神の祝福を受けた民は日本人だったとか、聖書のイザヤ書から神の民・ヤマトの「東への道」の記述が削除されている、といった持論を展開している。
HOHのこうした「スピリチュアル右翼」人脈は、必ずしも今に始まったものとは言い切れない。たとえばTOSHIはHOHの広告塔だった時代の2007年、
日本BE研究所という自己啓発セミナー会社の代表である
行徳哲男氏という人物を、東京・なかのZEROで行われた自身のコンサートのステージにまで登場させた。行徳氏の勉強会に出席した人物のブログによると、TOSHIは同年にその勉強会にもゲスト出演していたようだ。
コンサート・ステージで行徳哲男氏(左)の書を披露するTOSHI(2007年)
行徳氏は、日本創造教育研究所という自己啓発セミナー会社の顧問を務めているほか、
親学推進協議会の顧問でもある。そう。日本会議系の教育団体だ。
TOSHI脱会以降についてHOHと行徳氏との接点を見つけることはできなかったが、いずれにせよ、MASAYA氏は現在こうした「スピリチュアル右翼」方面の人脈を従来以上に強くネット上でアピールし、自己宣伝に利用している。TOSHIの脱会以降、HOHの問題がメディアで報じられることはなくなったが、いつまた深刻な被害者が出てもおかしくない。
<取材・文・撮影/藤倉善郎>