愚かな為政者の失政は、優れた専門家集団の統計も予測もぶっ潰す
人間の意思による愚行(善行)とその結果は予測できない
〈**IHME models show second wave of COVID-19 beginning September 15 in US 2020/06/11 Institute for Health Metrics and Evaluation〉 合衆国における第一波パンデミックから2020/06/15までの新規感染者数の推移を見ますと、5/25-29の間に新規感染者数が最低値となり、高いベースラインのまま反転上昇しています。従って遅くとも5/11には実際の感染者の増加が始まっていることになります。面白いことにこれは本邦と全く同じで、これまで繰り返し指摘してきたように本邦での第二波パンデミックの始まりは5/11頃で、それが統計に表れたのは5/24日前後です。 この同時期の欧州の10倍を超えるベースラインの高さは、たいへんに危険で、次のパンデミックの規模が大きくなりますし、対応時間も取れなくなります。 筆者は、2020/05/12に次のように発言しています*。 “合衆国のロックダウン解除は、全人類にとって最高の教材になる。だからみんな注目しよう。午後10:12 · 2020年5月12日”(筆者Twitter)合衆国はこのままでは第一パンデミックを収束できずにより強烈な第二次パンデミックを迎えかねないという予測。
— Hiroshi Makita Ph.D. (@BB45_Colorado) June 11, 2020
CNN
←日本も他人事ではなく、8月いっぱいで第一次パンデミックを収束させないと厳しいことになりかねない。 pic.twitter.com/5xKJfzkkD8
案の定、第二波パンデミックが発生し、8月になり漸く減少に向かわせることができましたが結局終息には至らずベースラインを65ppmから105ppmに跳ね上げさせ、「秋の波」第三波を迎えようとしています。 繰り返し指摘するように、この合衆国の失敗は、謎々効果によって規模こそ違いますが本邦と全く同じ時期に同じ理由で同じ推移をたどっています。 ここで疑問です。IHMEは、9月に発生するとしていた「秋の波」を予測できたのに、目前に迫っていた6,7,8,9月に合衆国を混乱と停滞に突き落とし、多くの命を奪った第二波を何故予測できなかったのでしょうか。 予測はあくまで死者数、感染者数の推移に基づいた数学的なものであり、過去の統計から算出されたその延長でしかありません。「秋の波」は、過去の経験から補正項や補正係数を組み込む半経験的手法により予測されていますが、やはり数学的な処理に基づいています。 従って、ホワイトハウス・新型コロナウイルス対策タスクフォースの専門家の全員が大反対する中、為政者が強い意志を持って介入の撤廃をし、経済再開を強行するという人間の意思に基づく行為(愚行であったり善行であったりする)は予測できません。仮に目の前で進行していても、それによって予測モデルを修正することはないです。 結果として、合衆国や本邦において行われた政治的意思決定による時期尚早な介入の撤廃=経済再開の様なことが行われた場合、予測は大きく外れることになります。残念なことに合衆国、本邦において行われた政治判断は、大失敗に終わり、本来は無いはずだった第二波パンデミックを6月から発生させてしまいました。 勿論、統計の変化を取り込むことで、時間がたてば予測は正常化しますが、パンデミックにおいて統計は必ず週単位で遅延するために予測が現実の傾向(トレンド)の変化に追従するのに時間がかかります。この時間が大きいために予測が外れ続けているように見えてしまいます。 この想定外のトレンドの変化に予測が追従するまでにかかる時間を筆者はこれまでの観察から三週間から四週間と考えています。 統計に表れる想定外のトレンドの変化は、人間の意思、気まぐれによるものが合衆国と本邦で現れましたが、ほかにも天災などの大規模な自然現象なども含まれます。また合衆国や本邦で見られた政府方針の変化だけでなく、韓国で光復節である8/15に発生したサラン第一教会によるソウル市での5万人大規模ゲリラ集会も該当します。 統計のトレンドの変化、突発的な統計の激変への予測の脆弱性は、当然起こりえることですが、過去一ヶ月間IHMEほか六種類の予測、評価を観察し分析し続けた結果、「長期予測は統計の大きな変化や質の低い統計に対して脆弱だな」というのが正直な感想です。 なぜトレンドの大きな変化への3〜4週間の遅延が生じるのか、どのように生じるのかについては、次回以降に論じます。統計のトレンド変化に対してどのように追従が遅延するのかを理解すれば予測をより有効に利用できるようになります。合衆国のロックダウン解除は、全人類にとって最高の教材になる。
— Hiroshi Makita Ph.D. (@BB45_Colorado) May 12, 2020
だからみんな注目しよう。
合衆国では大いに活用できた筈のIHME予測
この連載の前回記事
2020.09.29
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