「私たちは存在するし、バケモノではない」バイセクシュアルが直面する差別

「私と付き合うなら、二度と男と付き合わないでほしい」

「私と付き合うなら、二度と男と付き合わないでほしい。男にだけは走らないで」  好きな人にそう言われたとき、私はバイセクシュアルなんてやめたいと思ってしまった。この人が望むならレズビアンになる、と。けれども、そのとき私は自分が深く傷ついていたことに気が付かなかった。  同性と別れて異性と付き合うバイセクシュアルのなかに、結婚や出産を目的としている人も少なからず存在しており、LGBTコミュニティのなかでそれを問題視する声もある。そのため、実際にセクシュアルマイノリティの女性向けの出会い系アプリでも、「NGなセクシュアリティ」の欄にバイセクシュアルと書いてあるプロフィールを多く見かける。  また、同性または異性と交際した途端に、同性愛者または異性愛者を「選択した」と誤解されることもある。「やっと本当のセクシュアリティが分かったんだね」ということである。  しかし、バイセクシュアルという性的指向は存在するのだ。それを否定して、同性愛か異性愛の二択を迫ったり、LGBTコミュニティのなかで除け者にしたりするのは、当事者のアイデンティティを否定し心を傷つける行為だ。

バイセクシュアルは存在するし、バケモノではない

   バイセクシュアルであることは良いことでも悪いことでもない。ただシンプルにひとつの性的指向である。それなのに、世の中でのロールモデルや創作物での表象の少なさのために、存在を消去されたり、ステレオタイプの偏見を持たれたりしてしまう。  この記事を読んで、少しでも自分が偏見を持っていたかもしれないと気が付いて頂けたら嬉しい。バイセクシュアル当事者も含めて、最初から偏見を持っていない人などほとんどいない。まずは自分が偏見を持っているということを理解することがスタートだ。  バイセクシュアルは、存在する。バイセクシュアルは、バケモノではない。あなたとは「違う」かもしれないけれども、「同じ」人間だ。 <文/川瀬みちる>
1992年生まれのフリーライター。ADHD/片耳難聴/バイセクシュアル当事者として、社会のマイノリティをテーマに記事や小説を執筆中。 Twitter:@kawasemi910
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