東京都江東区で配布された3500万円分の冷感タオル。隠された3つの重大疑惑

山崎区長は熱中症についてまったく理解していないのでは?

エアコンイメージ また「熱中症」とは、炎天下やエアコンをつけていない暑い室内で体温が38~40℃以上にまで上昇して、失神・けいれん・意識障害などの多くの症状を引き起こすことです。熱中症になった場合、すばやく涼しい場所に移動し、体を氷や冷水で冷やして熱を下げ、水分と塩分を補給しなければいけません。  人間の体は50%以上が水分です。75歳以上の高齢者の方でも、30リットル程度の水分が体内に存在します。冷感タオルの重さは水分を含んでもたかだか100~200gで、温度は15~16℃です。40℃にまで上がった30リットルの大量の水温がそんなタオルで冷やしても下がる訳がなく、まさに「焼け石に水」です。  筆者は「高齢者にとって冷感タオルは不必要」だと言いたいのではありません。冷感タオルは暑い夏に「ひんやり」を感じる素晴らしいものです。ただ熱中症対策にはまったくならず、それどころか重大な危険を招く可能性があるのです。それを議会で指摘しました。  高齢者は暑さを感じる感覚が弱くなっています。そのため体温が上がっても自覚症状に乏しく、比較的涼しい日中や室内でも熱中症になる恐れがあります。  そんな高齢者が「この涼しいタオルがあれば、暑い夏に外出しても熱中症にならなくて大丈夫だ」と勘違いして外出すれば、熱中症になる危険性は上がってしまいます。熱中症の予防どころか真逆の効果をもたらしてしまうのではないかと、強い危機感と疑惑を感じました。 「山崎区長は熱中症の事について全く理解していないのではないか?」  これが1つ目の重大な疑惑です。

区議会議員44人の中でただ1人補正予算に反対、疑惑の調査へ

三戸あや区議(筆者)

区議会でただ一人反対した三戸あや区議(筆者)

 このまま江東区の75歳以上の高齢者全員に冷感タオルが配布されてしまうと、フレイル予防どころか熱中症の危険性を高めてしまう恐れがある。そのため筆者はこの補正予算に江東区議会議員44人中ただ1人、反対しました。  しかし山崎区長による「新型コロナウイルス感染症の第2波への備え」という言葉に押し切られる形で、他の43人の江東区議会議員は賛成し、6月30日に可決しました。しかし筆者は心配し続けていました。 「もしかしたら今年の夏は、新型コロナウイルス以上に熱中症で亡くなられる方が多いかもしれない」  そこで筆者は一人でも多くの江東区民の命を守るため、本事業に関する疑惑の解明に務め、調査を続けました。まず行ったのは、情報開示請求で得た入札情報とその資料に関しての精査です。  そこで判明した事実は驚くべきものでした。まず入札の起案(業者との契約日)は6月29日。これは補正予算の審議を行った6月30日の前日です。江東区議会議員が冷感タオル配布事業について審議した時には、もうすべては終わった後だったのです。これを担当である長寿応援課に問いただすと、 「暑くなる季節の前に事業を実施する必要があり、急ぎだった。予算が決まるまで他の事業から予算を流用していた。補正で予算が取れたので押し出す形で予算を戻した」  との回答が返ってきました。これは「仮に議会で予算が否決されても、他の予算を流用してでも強行する」ということです。筆者は強い違和感を覚えました。  長寿応援課はその名の通り、高齢者が元気に長生きできるように応援していく部署です。フレイル予防も熱中症対策もよく知っているはずです。こんな矛盾した事業をここまでして強行するとは思えません。

入札参加の10社のうち9社が辞退・不参加、事実上の随意契約

冷感タオルに同封されていた説明書

冷感タオルに同封されていた説明書

 なお、実際に配布された冷感タオル同封の説明書を読むと、フレイル予防と熱中症対策の基本が書かれているだけです。「冷感タオルをつけて外出して、熱中症に耐えられる体を作りましょう」というメッセージはまったく存在しません。  筆者はここに長寿応援課の隠れた抵抗と、長寿応援課に圧力を掛けてこの「偽善タオル」になりかねない事業を強行した存在を感じました。  そこでさらに入札情報を精査していくと「入札に参加した業者は全部で10社。10社中、7社が辞退、2社が入札不参加、そして1社のみが落札」という驚きの入札結果が判明しました。これでは事実上の随意契約です。普通の入札ではありえません。  この原因は江東区が冷感タオルの入札につけた品質・納期の条件のいずれかが、最初から落札した1社以外には受注不可能になっていたということです。 「入札による競争、区議会によるチェック、担当部署の抵抗を排除する大きな圧力があったのではないか?」  これが2つ目の重大な疑惑です。
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冷感性能と無関係な細かすぎる素材仕様
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