もちろん、すべてがクリーンなわけではない。お店にあるアルコールはもちろん、薬物なども身近にあるため、男性客からのハラスメント的な行為からは守られていても、あとは文字通り「自己責任」になってしまうとMさんは語る。
「たしかにホステスやほかの踊り子たちと、
踊り子のおへそからコカインを吸ったり、ウォッカを煽ったりしたことはあります。それは若いうちで決まった期間だけやると割り切っていたからできたことで、
のめり込んでしまうコは売春など別な性風俗に鞍替えしてしまうのかもしれません。ただ、ストリップに関しては、みんな大学を卒業したりして、数年で辞めてしまうのでズブズブ続けるコには会ったことはないですね。何か困ったことがあれば、
男性の目を気にせずに相談もしやすいですし」
バーカウンターやDJブースに立つのも女性のみ。BGMの選曲もホステスや踊り子が行うため、「欧州のストリップ」からイメージするような
ギラギラした雰囲気は皆無で、店内にはどこか
牧歌的な雰囲気が漂っていた。
というか、EDMやLAメタルが流れ、下着にお札を挟むようなアゲアゲな雰囲気を想像していただけに、
イーグルスの「
ホテル・カリフォルニア」(いくらなんでもストリップでこの選曲はないだろう……)が流れるなか、
着衣の女のコがまったり踊っている光景に拍子抜けしたというのが本音だ。
それでも女性たちは安心して
自分が望むだけの仕事をこなし、それに
見合うだけの対価が支払われ、
概ね安全な環境で仕事をこなしていることには変わりない。
客の求める「
スリル」や「
背徳感」は、性風俗産業に従事する
女性たちの犠牲に成り立っていることが少なくない。また、本人は「自分の意志」で行なっているつもりだが、社会・経済的問題から
気づかぬうちに追い込まれていたり、リストカットの痕などから他人から見ても明らかに
心身に問題を抱えているケースもある。
その点、顧客がどれだけ満足するかは別として、働く女性側からすると男性からの圧力を感じずに仕事ができる、「
牧歌的なストリップ」は決して悪いものではないのかもしれない。軽くなった財布とともに店の階段を上がりながら、そんなことを考えた。
<取材・文/林 泰人>