菅義偉政権で言論統制はより陰湿化する危険性<評論家・佐高信氏>

菅義偉政権

菅義偉政権(時事通信社)

「安倍政権モドキ」になる菅新政権

―― 菅政権が誕生する見込みですが、新政権の下で改めて権力とメディアの関係が問われます。 佐高信氏(以下、佐高): 菅が「安倍路線を継承する」と言っている以上、菅政権の本質は「擬似安倍政権」です。もっと言えば、「エセ安倍政権」「安倍政権モドキ」ですね。しかし「エセ」や「モドキ」は本家に劣ると相場が決まっているから、安倍政権は終わらないどころか、より陰湿な形で継続することになるということです。  菅はもともと陰湿な人物です。安倍や麻生にはまだ阿呆の明るさがあったが、菅にはそれもない。昔、「田中角栄は結婚式の花、三木武夫は葬式の花」という風刺があったが、菅はまさに「葬式の花」という感じではないか。  菅の陰湿さがよく表れているのが、安倍政権によるメディアコントロールです。7年8か月、菅を中心とする官邸がどれだけメディアに嫌がらせをしてきたか。菅は東京新聞の望月衣塑子記者を目の敵にして、官房長官会見では質問妨害や木で鼻を括ったような回答を繰り返してきました。2015年にテレビ朝日の「報道ステーション」で、コメンテーターの古賀茂明が「I am not Abe」というプラカードを掲げた際、番組プロデューサーに直ちにクレームを入れたのも菅の秘書官でした。

菅義偉は岸井成格の仇だ

 その最たるものが、私の友人であった毎日新聞の岸井成格に対する個人攻撃です。岸井が安倍批判を強めていた2015年の春先、菅はいきなり岸井の私的な勉強会に顔を出して、「良い勉強になりました」と言い残して帰っていったそうです。これほど菅の陰湿さや陰険さ、嫌らしさを象徴するエピソードはない。  同年秋に、岸井がTBSの「NEWS23」で安保法制を批判すると、ケント・ギルバートや小川榮太郎ら安倍応援団が呼びかけ人として名前を連ねた「放送法遵守を求める視聴者の会」が読売新聞と産経新聞に一面広告を出して、岸井の発言は放送法の規定に対する「重大な違反行為だ」などと名指しで個人攻撃を加えました。これは実質的に安倍政権による「岸井降ろし」であり、官邸が無関係だったとは思えない。  結局、岸井は2016年に「NEWS23」のキャスターを降板して、2018年に亡くなりました。岸井攻撃の黒幕は菅だったのではないか、岸井は菅に殺されたのではないか。昨年出版した『官房長官 菅義偉の陰謀: 新・佐高信の政経外科』(河出書房新社)は、私が岸井の仇討ちとして書いた本です。  メディアを統制しようとする菅の体質は今に始まったことではない。菅は第一次安倍政権で総務大臣に就任した時から、放送法を改正して放送事業者に対する罰則規定を盛り込もうとしたり、総務省の下にテレビ番組の内容を監視する第三者委員会を作ろうとしたり、NHKの番組編集に介入したりしていたのです。  菅は以前からナチスの宣伝大臣だったゲッベルスになぞらえられてきましたが、安倍政権から菅政権に変わるというのは、ヒトラー政権からゲッベルス政権に変わるようなものです。菅政権によるメディアコントロールは、これまで以上に陰湿かつ陰険なものになるに違いない。
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ジャーナリズム再生のためにも、メディアは安倍の疑惑を徹底追及せよ
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月刊日本2020年10月号

【総力特集】「安倍・亜流」菅政権の正体



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