「安倍前首相会見後の書面回答は非公開。記者クラブには公開」現役記者らから疑問の声

記者会見

17日に行われた菅総理の記者会見(撮影:小川裕夫)

 7年8カ月にわたった安倍晋三政権が終わり、菅義偉政権がこのほど誕生した。前政権下では首相会見のあり方がたびたび問題視され、出席記者からは質問時間が十分に取られてないなど批判があった。  進行する官邸報道室は指名されなかった記者を対象に書面質問を受け付けていたが、このやり取りは現在もなおホームページ上で公開されていない。  一方、首相会見を主催する内閣記者会(官邸記者クラブ)には、書面回答の結果が全て公開されている。要するに、記者会に所属する記者は質問と回答を閲覧できるが、フリーランスのジャーナリストや一般市民はできない状態になっているのだ。  なぜホームページには残さず、内閣記者会にのみ共有されているのか。現役の新聞記者やフリーランス記者から疑問が出ている。

6月の前首相会見時は、自民党内で立て続けに不祥事。しかし、質問はほとんど出ず

 6月18日の安倍前首相会見では、党内の不祥事が話題に出た。公選法違反(買収など)の疑いで参院議員の河井案里氏、夫で前法相の衆院議員の克行氏が同日、広島地検から逮捕されたからだ。  前首相が冒頭に「責任を痛感している」と述べたことについて、フジテレビ記者が「総理、総裁として具体的にどういった責任を痛感されているのか」「自民党から振り込まれた1億5000万円の一部が買収資金に使われたことはないということでいいのか」と尋ねた。  それに対して、前首相はこのように述べている。官邸ホームページに掲載された会見記録の中から抜粋した。 <具体的な責任の痛感について> 「我が党所属であった現職の国会議員が逮捕されたことは、大変遺憾であります」「自民党総裁として、自民党においてより一層、襟を正し、そして、国民に対する説明責任も果たしていかなければならないと、こう考えています」 <買収資金について> 「昨日、二階幹事長より、党本部では公認会計士が厳格な基準に照らして、事後的に各支部の支出をチェックしているところであり、巷間(こうかん)言われているような使途に使うことができないことは当然でありますという説明を行われたというふうに承知をしております」  党から振り込まれた現金が買収資金に使われたことは論拠を示して否定した。一方で逮捕への責任について、具体的な説明は乏しい。  しかし会見の規定で「さら問い」(重ねて質問すること)ができないことになっており、深掘りもされなかった。指名された他の記者からも河井夫妻逮捕について尋ねる質問はなかった。  党内の不祥事はこのとき、河井夫妻の逮捕だけではなかった。  公選法違反容疑で経産相を辞任した衆院議員の菅原一秀氏が会見2日前の16日、公選法に抵触するおそれがあると認めて謝罪。また、衆院選(17年10月)で運動員に違法な報酬を支払ったとして、衆院議員の谷川弥一氏の陣営関係者7人が会見同日の18日に公選法違反(買収)の疑いで書類送検されていた。  しかし、これらに関する質問は18日の会見では出なかった。  日本テレビ記者からは「ポスト安倍について意中の人はいらっしゃりますか?」との質問が出た際、前首相は笑みを見せて回答する余裕を見せた。  「まだ私の任期は1年3か月残っているわけであります」と答えると、会場内から笑い声がもれた。奇しくも約3カ月後、安倍氏は持病を理由に7年8カ月守ってきた政権の座を自ら下りた。

大川総裁「書面での質疑応答はもともと会見でぶつけたかったこと。会見の一部」

 フリーランス記者として参加していた芸能事務所「大川興業」総裁の大川豊さんは、書面質問の機会を得た。1問だけという制約の中、強度高度障害者のコロナ医療対策について尋ねた。障がい者施設を訪問してきた経験を踏まえ「国のトップの方に現場の声を伝えたい」との思いだった。翌日夕方には前首相が答えたという回答書をメールで受け取った。  ただ、菅原氏や谷川氏陣営の公選法抵触をめぐる問題を他の出席者が書面質問で追及したのかどうか、大川総裁は未だに把握できていない。一方で内閣記者会には大川総裁が依頼した書面質問も含めて回答が共有されている。官邸報道室からこの点について説明はない。 「書面での質疑応答は、もともと会見で聞きたかったことです。時間の都合でできなくなったというだけで、会見の延長線上、その一部です。誰もが総理に質問できるわけではないのですから、会見記録と同じようにホームページで公開してほしい」(大川総裁)
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現役の全国紙記者「内閣記者会が公開するようもっと抗議するべき」
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