牛久入管より解放され、安堵の表情を浮かべるアンドレさん
日系ブラジル人のアンドレ・くすのきさんが牛久入管から9月2日に仮放免された。トータルで約2年の収容生活だった。
アンドレさんは2005年、18歳の時に来日。もともとは日本で仕事をするためにやってきて、すぐ帰る予定だった。日本で出会った女性と結婚して2人の子供を授かり、そのまま日本で暮らしていた。
しかし、たった一度の過ちがアンドレさんの運命を狂わせ、入管で虐待される日々を送ることになる。違法薬物を所持していたことにより3年の執行猶予がつき、刑に服すこと自体はなかったが、この件でビザの更新ができずに仮放免の状態となってしまったのだ。
その8か月後の2018年1月、東京入管に収容されることになる。このことが原因のひとつとして、離婚となってしまった。しかし、元妻にはいつでも2人の子供と会うことを許されていた。
退去強制命令が出てしまったアンドレさんだが、子供たちと離れることが辛くてブラジルに帰ることを躊躇していた。入管職員には、「離婚したのだからもう関係ない。早く帰国するべきだ」と促されたが、戸籍上は他人でも自分の子供には変わりない。どうしても離れることが辛く、悩み続けた。
後ろ手錠をしたまま運ばれるアンドレさん。「痛い!」と激しく叫んでいるが、職員に「痛くねーよ!」と怒鳴られている(アンドレさん提供)
2018年10月、アンドレさんは東京から牛久入管(茨城県)へ移送されることになった。その理由を求めたが、入管職員が答えてくれることはなかった。
遠い牛久入管に連れて行かれたら、知り合いはおろか、誰も面会に来なくなってしまうのではないかという不安が訪れた。さらに、同年に自殺者を出している場所(2018年4月にインド人が自殺している)に行く恐怖も感じていた。
「どうしても行きたくない」とトイレに逃げて籠城したところ、職員たちから激しい暴力を受け、牛久へ連れて行かれた。この暴力事件についてアンドレさんは現在、国賠訴訟で争っている。(筆者記事
「常勤医が『気に入らないなら日本から出ていけ』。牛久入管でいまだ横行する被収容者イジメ」参照)
過去、入管職員から制圧にあった人たちから証言を集めると、やり方はだいたい共通している。おそらくマニュアルがあるのだろう。
集団で被収容者を地面に叩きつけ、職員たちが押さえつけ後ろ手錠をかける。身動きできなくなった相手に対し、手首をねじり上げるなど必要以上に痛めつける。痛みで叫ぶ被収容者に、よってたかって罵倒の言葉を投げかける。
これは徹底して抵抗する気持ちを失わせ、屈服させるつもりでやっているようだが、一見するとただのリンチとしか思えない。公務員がここまでやっていいのだろうかとの疑問が残る。刑務所でも、ここまでやれば問題になるだろう。