健康や社会秩序に大きな影響がない一方で、経済効果には目覚しいものがあります。勃興する“グリーンビジネス”の勢いは凄まじく、2019年の北米での合法大麻市場の規模はおよそ140億ドルに迫り前年比+30%となっています。この伸び率は2000年代のインターネット普及の速度に匹敵しています。
全土で合法化を施行したカナダでは、大麻関連企業が株式を上場し莫大な利益をあげました。2019年にはカナダの大麻企業であるTilray社のCEOの報酬がテスラモーターズのイーロン・マスクに次ぐ世界2位であったことは大きな話題となりました。
日本人でも本田圭佑氏がカリフォルニアの大麻販売業者に出資している事が
公開されています。
このような大麻産業の勢いは、コロナ渦中においても止まることがありません。
北米の合法地域では大麻は自粛生活における必需品として、ガソリンスタンドや食料品店と並んで営業を許可され、売り上げは急増しています。
これは、嗜好品としての使用とストレス緩和目的の医療用途の中間に位置する使用ではないかと考えられます。今後、世界の合法大麻市場規模は2027年までに736億ドルに達すると資産されています。
更にコロナに関連して、現在各国でCOVID-19感染症に対し、医療大麻やその成分の一種であるCBDが有用である可能性が研究されています。特に医療大麻研究で世界を牽引するイスラエルでは、数々の大学や企業が先を争って研究に取り組んでいます。
合衆国ではサウスカロライナ大学が、大麻に含まれる成分であるTHCがコロナウイルス感染症に有効である可能性を示唆する論文を相次いで3本発表しています。
このような動向を、政治家も無視する事が出来なくなってきています。
来たる11月3日の大統領選挙に際し、民主党候補のバイデン氏のシニアアドバイザーである、サイモン・サンダース氏は、バイデン氏が大統領になった場合、全米で大麻を非犯罪化し、大麻関連の犯罪歴を帳消しにすることを明言しました。
合衆国における大麻の非犯罪化・合法化は時間の問題と言えるでしょう。
再び日本国内に目を向けてみると、逮捕されているのは伊勢谷氏だけではありません。大麻関連の逮捕件数は年々増加の一途を辿り、2019年は4000件を超えています。これほど厳しい取締を行なっているに関わらず、検挙数や使用者数が減らないことが政策としての過ちを示しています。
大麻の健康被害と比べ、逮捕されることの社会的被害は甚大です。このような制裁が誰のためになっているのか、一度立ち止まって考えてもいいのではないでしょうか。
<文/正高佑志>
熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。