進む大麻の非犯罪化。北米の市場規模は140億ドルに

アルコールより害が少ないという研究も

大麻 2020年9月7日、俳優の伊勢谷友介氏が大麻取締法で逮捕されたことは大きな衝撃と共に報道されました。  日本では、凶悪犯罪のようなセンセーショナルな報道が繰り返されますが、海外に目を向けてみると、いわゆる先進諸国では大麻の単純所持・使用で逮捕される国は少なくなってきています。  合法ではないが、逮捕はされない程度の軽犯罪として扱う、この動向は非犯罪化と呼ばれています。日本では未成年の喫煙や自転車での飲酒運転が非犯罪化の実例に当たります。  このような状況に至った理由は複数ありますが、その中でも重要なのが、大麻が個人の健康や社会に与える悪影響は、お酒や煙草と比較し、明らかに小さいという事が科学的に示されたという点です。下の表は2010年にLancetという医学雑誌に掲載された内容を参考に作成されたものです。 薬物比較研究の決定版 この研究ではイギリスで流通する各種の薬物を、合法、非合法を問わず使用者の健康への影響や社会的な弊害など、合計16項目においてスコアリングし、薬物の危険度ランキングを作成しています。  結果、アルコールの弊害が72点であったのに対し、大麻は20点であり、スコア的には3分の1以下であることが明示されています。この結果を元に、各国首脳経験者やノーベル賞受賞者が作る有識者会議である薬物政策国際委員会は各国に薬物への厳罰政策を改めるよう勧告を出し続けています。  2019年には国連も全会一致で薬物所持の非犯罪化を推奨する声明を出しています。

嗜好品としても合法化する地域が増加

 更に近年、非犯罪化から一歩進んで、嗜好品としても合法化する国や地域が相次いでいます。合法化というのは、政府がルールを定めて管理、課税するということであり、”野放し”とは異なります。  2018年の元旦にカリフォルニア州で、また10月にカナダ全土で合法化が施行されたことは日本でも広く報道されました。2020年10月には、ニュージーランドで大麻の合法化を巡る国民投票が行われる予定です。  この“合法化”は壮大な社会実験であるという側面は否めませんが、ここまでの結果として成功であると考えられています。  懸念されるような社会秩序の崩壊は、今のところ合法地域のどこからも報告されていません。アメリカ西海岸のワシントン州では、2012年に嗜好大麻の合法化が行われていますが、合法化後にむしろ犯罪発生率は低下したと報告されています。  また大麻依存に関しても、合法化によって逆に低下したことが学術的に報告されています。
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