「セックスワークは仕事です」。デリヘル嬢が抱いた「セックスワーカーは社会の被害者論」への違和感
「『セックスワーカーは社会の被害者』なんて言う人達は、セックスワークの現実を知らないんでしょう」
デリバリーヘルス歴7年のYさんは言う。
「知らないのに語ってもいいと思っているのは、見下し以外の何物でもないですよ」
新型コロナウイルスの感染が広がるなか、セックスワークを含む「夜の街」は感染拡大の要因としてバッシングを受けた。また、岡村隆史氏の「コロナが明けたら美人さんが風俗嬢やります」という発言が炎上したり、社会活動家藤田孝典氏がセックスワーク廃止論を唱えたりしている。
そんな中、セックスワークと聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろう。多くの人が言うように、果たしてセックスワーカーは社会の被害者なのだろうか?
実際には、生身のセックスワーカーの多くは、自らをプロとして認識して働いているという現実がある。その一例として、デリバリーヘルスで働くYさんを紹介したい。
Yさんがデリバリーヘルスで働き始めたのは、少し経済的余裕がなくなっていた大学2年生の頃だ。きっかけはルームシェアをしていた友人がデリバリーヘルスで働いているのを聞いたことだった。性に対して興味もあったし、収入も高かったため、関心を持った。
はじめて出勤するときは緊張したが、とはいえインターネットのオフ会などで初対面の人とセックスすることの延長線上くらいに感じたという。それ以来、中断を挟みつつも、7年間に渡ってセックスワークを続けてきた。
セックスワークをしてきて、良いことも悪いことも沢山あった。
良いことは、たとえば店のスタッフや利用者に褒められたり感謝されたりして、嬉しかったことだ。
認められたのは、性的なスキルやコミュニケーション能力だった。性的なスキルが上がることで、プライベートに活かせるのも利点のひとつだ。
セックスワークにおいて、とりわけ重要なのは利用者が何のためにサービスを利用しているのかを理解して、それを提供することであり、その点では他の仕事と変わらないという。
また、幼少期に虐待を受けていたYさんは、セックスワークによって、自他の区別というものが初めてつくようになった。利用者の希望が自分の希望と異なる時、それらを分けるべきだということに気が付いた。セックスワークによって、虐待経験を乗り越えることにもつながったのだ。
さらに、ジェンダーフルイド(※1)でもあるYさんにとって、自分のジェンダーアイデンティティを受け入れるきっかけにもなったという。多くの利用者は自分の好きな「女性」像を投影しているだけであって、「相手が自分の性別をどう捉えるか」と「自分が自分自身の性自認をどう捉えるか」は別のことであると理解することができたからだ。自分のジェンダーアイデンティティは他人が決めるものではない、と思うことができるようになったのはYさんにとって大切なことだった。
(※1) 性自認が流動的に変化する人のこと
プロフェッショナルとしてのセックスワーカー
セックスワークをしていて良かったこと
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