営業時間短縮要請で明暗。[都心/地元]飲食店の悲鳴
これまで東京23区限定で出されていた飲食店の夜10時までの時短営業の要請が解除される。飲食業界は4月の緊急事態宣言以降、危機的状況が続くが変化の兆しも。明暗が分かれた業界の悲喜こもごもをリポートする!
8月後半の平日夜、とある歓楽街を歩いていると、後方から「このままじゃマジで死ぬわ」という声が聞こえてきて、思わず振り返った。声の主は飲食店のキャッチとおぼしき30代ぐらいの男性。別店舗の前掛けをつけた男性も傍で大きく頷いている。
4月7日に発令された緊急事態宣言と外出自粛要請で弱った飲食店に、追い打ちをかけるかのような8月の営業時間短縮要請。6月に東京アラートが解除され、徐々に戻りつつあった客足に、9月半ばまでの時短営業延長(東京23区限定)で、急ブレーキがかかった。9月8日には老舗洋食チェーンの「キッチンジロー」が23区内の12店舗と大阪の1店舗を閉めると発表し、世間を騒がせた。
都内の飲食店事情に詳しい『食楽』編集長の大西健俊氏は次のように語る。
「どこも苦しい状況ですが、特に厳しいのが港区、中央区、千代田区の中央3区。もともと住人が少なく、ビジネスマンが多いエリアな上に、緊急事態宣言解除後もリモートワークを推奨する企業が多い。それに伴い、接待や宴会も軒並み激減しています。9月に入って赤坂の老舗居酒屋『M』にお邪魔したのですが、通常夕方5時の口開け早々満席になるお店に客は自分たちのみ。7時までにはポツポツと人が入ってきましたが、店主の話によると、現在の客入りは平常時の5、6割といったところだそうです」
宴会や接待需要が主軸の飲食店が直撃をくらっているのはわかるが、個人利用が多い居酒屋も厳しい状況に立たされている。「飲んで電車に乗るのが憚られる」「気軽に同僚を誘えなくなった」などの心理的要因も大きいのだろう。
「昨年、銀座にフレンチの店『O』をオープンしたシェフによると、140万円の家賃に従業員の給料と食材費を合わせると毎月400万円が飛んでいくそうです。それでも独立前からのお客さんが来てくれるらしく、何とか凌げている状態。もっと苦しいのは、チェーンや多店舗展開している店。出ていく金額も大きいので、少しでも流血量を抑えるべく早めに閉店の判断を下しています。うどんすきの『美々卯』が関東撤退を発表したのも5月末でしたよね」(大西氏)
2軒目、3軒目での利用が多いスナックやバーも厳しい。四谷3丁目のスナック「アーバン」の臼井悠さんは語る。
「ウチは地下のカラオケスナックなので、換気の面からいっても不安があり、来る人は拒みませんが、こちらから積極的な営業がかけられない状況です。休業していた4~6月の売り上げはほぼなし。7月以降も通常の5分の1ぐらいでしょうか。保証協会・金融公庫共に早い段階で融資を申し込みましたが、怖いのは来年度。今回の協力金も給付金も課税対象なので、年末までに店内の改装などで経費を使わないと、と焦っています」
都知事の「夜の街」発言で直撃をくらった歌舞伎町のバー「O」も厳しい状況が続いているという。
「もともと遅い時間から開けているお店が多いエリアなので、夜10時までというのは実質、ここでは飲むなと言われているようなもの。協力金?1日分の売り上げ程度にしかなりませんが、歌舞伎町自体の客足が落ちているので、8月中は閉めていらっしゃるお店も結構ありましたよ」
港区、中央区、千代田区の“中央3区”に激震
個人利用が多い居酒屋も厳しい状況に
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