多様性を推し進めるアカデミー賞の新基準。「映画が変わってしまう」という批判の愚
         近年、女流監督や黒人キャストによる作品、アジア系の映画などからヒット作が生まれ、より多様性が注目されている米エンタメ業界。そんななか、賞レースでも、よりダイバーシティを推し進める施策が話題となっている。
 世界で最も有名な映画賞といえば、やはりアカデミー賞だ。長い歴史と権威のある同賞の、作品賞に関する新たなルールが世界中の映画ファンの間で賛否両論を巻き起こしている。
 簡単に説明すると、より多様なバックグラウンドを持つキャストやスタッフを起用しなければならないのだが、見出しや内容を要約したまとめ記事だけで、その是非を判断するのは早計だろう。
 案の定、ネット上には「ポリコレが騒がれすぎた結果!」「マイノリティが優遇されすぎている!」といった声が溢れているが、まずは新たな基準の内容をしっかりと読んでから、議論をするべきだ。以下、米国芸術科学アカデミーが発表した内容を翻訳してみた。(参照:米国芸術科学アカデミー)
 2024年の第96回アカデミー賞から、作品賞の候補となる作品は、下記AからDの4基準のうち2つを満たす必要がある。まずは基準Aから見てみよう。
●基準A:スクリーン上の表現、テーマ、物語について
 基準Aを満たすには、作品は下記の基準のうち、ひとつ以上が該当すること。
 ▼A1・主演、もしくは重要な助演について
  少なくとも一人以上の主演、もしくは重要な助演が下記の人種もしくは民族の出自である。
 ・ アジア系
 ・ ヒスパニック/ラテン系
 ・ 黒人/アフリカ系アメリカ人
 ・ 先住民族/アメリカ先住民/アラスカ先住民
 ・ 中東系/北アフリカ系
 ・ ハワイ先住民/太平洋諸島系
 ▼A2・その他の出演者
  脇役やより小さな役柄の30%以上が、下記の基準のうち2つ以上に該当する。
 ・ 女性
 ・ 人種や民族集団
 ・ LGBTQ+
 ・ 認知や身体的な障害がある人、もしくは聴覚に問題や障害のある人
 ▼A3・主なあらすじ/主題について
  作品の主なあらすじやテーマ、物語が下記を扱っている。
 ・ 女性
 ・ 人種や民族集団
 ・ LGBTQ+
 ・ 認知や身体的な障害がある人、もしくは聴覚に問題や障害のある人
 基準Aを満たすには上記のうち、たったひとつをクリアすればよい。つまり、白人男性以外がまるで登場しない作品でない限り、ほぼすべての作品が基準Aはクリアすることになる。
     
    
「映画が変わってしまう」は本当?
実際はほぼすべての作品がクリアか
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