ベネズエラでマドゥロ政権が収監中の野党議員ら110人を恩赦。その背後になにがあったのか?

マドゥロ大統領

コロナ禍で大変なベネズエラ。マドゥロ大統領が野党勢力110人を恩赦したのはなぜ?
photo by kremlin.ru (CC BY 4.0)

8月末、マドゥロ政権突然の「恩赦」の謎

 8月末にベネズエラのマドゥロ大統領が収監させていた野党の議員ら110人を恩赦するという出来事があった。当初、誰がこの為に仲介し、その狙いが何んであるのかというのが不明とされていた。  ところが9月1日、その謎が解けた。トルコのチャヴシュオール外相がこの恩赦の仲介をしたと発表したのだ。  仲介の根拠となったのは野党のエンリケ・カプリレスとスタリン・ゴンサレスの二人がトルコの高官と交渉して、12月に予定されている総選挙に国際監視人として出席してもらうことを約束。選挙が公正に行われたということを国際的に披露するというのを恩赦の交換条件にしたというのだ。(参照:「ABC」)  マドゥロがこの提案を飲んだのにも理由がある。マドゥロは国際的に信頼性を失っており、違法選挙になると評価されるのを回避したいという意向をもっていた。この二人の野党議員からの提案はマドゥロにとって好都合であったのだ。

野党議員2人の行動には野党内で賛否

 ところが、野党のリーダーであるファン・グアイドーには寝耳に水という感じで、この二人がマドゥロと交渉していたことは全く知らされていなかったというのだ。しかも、グアイドーはこの選挙に参加するのを拒否している。だから、今回の二人の議員の行動にはレッドラインに足を踏み入れたとグアイドーは受け止めているという。  それに対してカプリレスは「相手が中国人、ロシア人、ヨーロッパ人であろうとベネズエラ国民を危機から救うためには誰とでも交渉する意向だ」と表明し、「今日、私が個人的にやったことで政治犯だとして収監させられていた110人を解放することができたことに我々は非常に満足している」と述べている。  更に、「私の唯一の関心はベネズエラ人を守り、ベネズエラに自由を取り戻すことである。国が変わるのを見るまで諦めない」と強調した。(参照:「ABC」)
次のページ 
かつて大統領選に挑んだ男
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会