ベネズエラでマドゥロ政権が収監中の野党議員ら110人を恩赦。その背後になにがあったのか?

かつて大統領選に挑んだ男

 カプリレスはグアイドーが表舞台に登場する前に二度も大統領選挙に臨んだ人物だ。しかも、彼のライバルでグアイドーの親分でもある大衆意思党のリーダーであるレオポルド・ロペスはカラカスのスペイン大使館に籠っているということで、グアイドーの野党リーダーとしての求心力が弱まっているのを利用してカプリレスは独自の行動を取ろうとしているようだ。  グイアドーは2019年1月に議会を支配していた野党のリーダーに任命されたが、それ以後現在に至るまでマドゥロを大統領のポストから追放できないままの状態が続いている。しかも、昨年4月に武装蜂起したが失敗し、今年5月にはガデオン作戦と称してマドゥロを拉致しようとして米国の元軍人2名を含む60名近い傭兵がベネズエラに侵攻しようとして国家警備隊と特殊部隊との交戦で数名が死亡し、40数名が拘束された。この事件にグアイドーが関与していたという疑いがある。  これらのことから、4つのグループに分かれている野党をグアイドーがまとめる統率力は失ったと見られるようになっている。

混迷するベネズエラ野党勢力

 それが今回のようなチャベスそしてマドゥロに対抗する勢力をもっていたカプリレスがグアイドーのポストを奪おうとして動き始めたということのようだ。  実際、グアイドーを支えている中枢部では今後カプリレスの方に支持が移る動きが生まれるではないかと懸念している。しかし、米国をはじめ大半の欧米各国はグアイドーへの支持を現在も維持している。(参照:「El Pais」) <文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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