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経済事件の裏側を暴き続けるWebメディア「闇株新聞」。中でも金融・マーケット事情に精通する主筆が、「新型コロナ・ショック」にありながらも株価が上昇を続けるアメリカ株市場について分析する。
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Photo by Alexi Rosenfeld/Getty Images
米国株式市場は8月18日に
S&P 500が史上最高値を更新した。その後も更に上昇し、9月2日には最高値を更新するという事態になっている。
また、ハイテク企業の多い
NASDAQ総合指数も同様に史上最高値を更新しており、昨年末から9月2日までのアマゾンの株価上昇率は91%、アップルは73%。その後もさらなる上昇を続けている。
NYダウだけはまだ2月12日の史上最高値(29551ドル)に届いていないが、3指数ともコロナウイルスの影響で3月下旬には大きく落ち込んでいたことなど「きれいに」忘れている。
現在もそのコロナウイルスが世界中で再拡大していることや、米中間の緊張が極限に達していることや、米国2020年4~6月GDPが前期比で9.5%(年率換算32.9%)も落ち込んだことや、同期における米企業業績が前年同期比33%減であることなど、全く気にしていないことになる。
もちろんFRBをはじめ世界の中央銀行が金融緩和・量的緩和を強化しているからで、米国の(つまり世界の)株式市場が必ずしも「バブル」であるとも言い切れない。
しかし「ほんの最近になって」気になる「
バブルの兆候」が目につき始めた。そう思う現象を4つほど順不同で挙げてみる。
その1
ソフトバンクグループ(SBG)が8月17日、アマゾンの12億ドルを始め、ネットフリックス、テスラ、マイクロソフト、アルファベット、エヌビディアなどに大量投資していることが当局への提出文書で明らかになった。
投資開始時期は不明であるが、2020年4~6月期決算にはなく、孫社長が11日に投資運用子会社を設立しIT関連企業を中心に投資すると公表していたため、最近になって大規模に投資し始めたことになる。
これを「今更」とか「高値掴みになる」などと心配するのではなく、「
あの孫社長が我慢できなくなるほど米国株とくにハイテク企業の株価が過熱している」ことになる。
その2
SPACとは特別目的会社のことであるが、実態は「
空っぽの箱」である。そのSPACが今年になってすでに51件、190億ドル(2兆円)の資金調達を行って株式市場に上場している。SPACは「近い将来、有望未上場企業を買収する」として、あらかじめ資金調達して株式市場に上場するものである。
投資家は「何か素晴らしい公開企業に化ける」ことだけを期待して、SPACに超高値で投資する。買収される未公開企業も面倒な上場手続きや自ら資金調達を行う必要がなくなる。ぎっしり資金の詰まった空箱に入るだけでよい、究極の裏口上場である。
いくらなんでも「やりすぎ」である。例えれば2017年に募集したソフトバンクのビジョンファンドが、「有望な未公開企業に10兆円投資しますよ」というだけで20兆円もの資金が集まるようなものである。何年か前のICOのようなものでもある。
これもバブルの「
あだ花」である。