PCR検査もロックダウンもいち早く実施したペルーは、なぜコロナ致死率で世界最悪になってしまったのか?

コロナ禍のペルー

貧富の格差が大きかったペルー。コロナ禍によって経済も打撃を受け、格差は更に拡大する可能性もある
Photo by Raul Sifuentes/Getty Images

致死率ワースト1になったペルー

 8月26日、南米ペルーはコロナウイルス・パンデミックの致死率で世界トップとなった。それまではベルギーがトップの位置にあった。〈参照:「Bloomberg」〉  26日のペルーの10万人におけるコロナによる死者数は85.8人。この中にはまだ1万443人のコロナによる死亡とは断定されていない人がいる。このような場合はその大半がコロナによる死者だと判断されても間違いないであろう。そうなると、致死率はさらに増えることになる。  ペルーの人口は3260万人である。そこで感染者61万3378人、死者2万8124人という致死率で世界トップになった。しかも、現在1万3051人が入院中で、その中の1512人が人工呼吸器を必要としている患者だ。  更に、事態の深刻さを伝えるものとして153人の医師が死亡している。〈参照:「RPP」、「Infobae」〉

PCR検査もロックダウンも功を奏さなかった背景

 ペルーはエクアドルと同様に南米ではPCRテストをより早く実施した国であった。5月24日までに86万人を対象にPCRテストを実施した。また封鎖も3月16日から開始して南米ではエクアドルと並んで最も封鎖の実施が早かった。封鎖期間中は買い出しと薬局に行く以外は外出が禁止された。にもかかわらず、感染が拡大してしまった。  しかし、これはPCR検査やロックダウンが無意味だったからだ……という早合点をする短絡的な人がいると思うが、当然そういうことではない。  ではなぜか? ペルーにおいては、それらの感染症予防の「基盤」が機能しない、社会的な要因があったのである。
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ペルーの感染状況悪化を加速させた5つの要因
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