「早く映画に出会いすぎてしまった」悲しみに似た感情も大事にしたい
——村上さんの、現時点での役者としての目標があれば教えてください。
村上 役者としての目標は「続けていければいいんじゃないかな」と素直に思ったりもするのですが、「十分な経験のないまま役者になってしまった」ということをもったいなく感じることもあるんです。役者をやりながら勉強をしていくことは楽しく、それはそれで頑張る要素にはなるのですが、「映画という、たくさんのものをまとめた総合芸術に早く出会いすぎてしまった」、「いろいろな経験をした後で、最後に出会ったのが映画だったらよかったのに」とどうしても考えてしまうんです。本当は「役者たるもの、こうするべきだ」みたいな信念を持つべきなのでしょうが、その悲しみに似た感情も大事にしようと考えています。
——憧れの役者はいらっしゃいますか。
村上 難しい質問ですが、あえて挙げるのであればマシュー・マコノヒーですね。彼はオスカーを取った時のスピーチで、「僕のヒーローは常に自分の10年後」と言っていて、25歳の時に「今のあなたはヒーローですか?」聞かれても、やはり「10年後の35歳の自分がヒーローだ」と主張していました。僕はデビュー当時、彼と全く同じことを公に言っているんですよ。しかも、マシュー・マコノヒーよりもちょっと早く。憧れだからというよりも悔しいので、ここで言っておきます(笑)。
——豊原プロデューサーと小泉アソシエイト・プロデューサーが「最初の脚本では“キラキラ映画”みたいなところがあった」などと話されていたのですが、具体的などのようなことが書かれていたのでしょうか。
外山 当初の脚本は柔らかいドラマといった印象でしたね。出来上がった映画よりも、セリフもかなり多かったと思います。
村上 けっこうハートフルな内容でしたよ。温かいイメージがありました。
外山 当初の脚本では、早々に翔太がタカラの秘密に気づいていましたね。いろいろ議論をして、最終的にはああいう形になりました。
——ラストシーンにものすごく感動しました。ネタバレになるから詳しくは言えないとは思いますが、ひょっとすると監督ご自身の経験が反映されているのかな、とも思ったのですが、いかがでしょうか。
外山 いえいえ、あんな経験はありません(笑)。クライマックスからラストにかけては、タカラが翔太よりも一足を先に新しい価値観を見出し、翔太も遅れてその価値観に到達する、ということを描きたかったんです。
——小泉アソシエイト・プロデューサーは「現時点での外山監督の集大成をまずは見せたい」と語っていましたが、監督ご自身は集大成になったと自負されていますか。
外山 はい。自分の作品の過去のものよりも、プロデューサーのお二人がさらに上へ連れて行ってくれました。実際に今の僕ができるベスト、集大成以上のものができたと思います。
<取材・文/ヒナタカ>
<撮影/鈴木大喜>
<ヘアメイク/橋本孝裕(SHIMA)>
<スタイリスト/望月唯>
<衣装協力/costume/LAD MUSICIAN/LAD MUSICIAN HARAJUKU、Paraboot/Paraboot AOYAMA>
映画『ソワレ』は、8月28日より全国にて公開。
村上虹郎 芋生 悠
監督・脚本 外山文治
配給・宣伝:東京テアトル PG12+
(C) 2020ソワレフィルムパートナーズ
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