例えば、2020年4月29日にコロナ禍における文化芸術の補償を共産党・志位和夫委員長に問われた際の答弁*。現場の声や補償の必要性について角度を変えながら質問されても、安倍総理は原稿に書かれた既知の制度の説明に終始する。
〈*「
文化芸術への補償は誤魔化し、終息後の「GOTO事業」で頭がいっぱいの安倍総理。答弁の信号無視話法分析で明白に」〉
また、2019年6月10日に年金2000万円問題の責任を立憲民主党・蓮舫議員に問われた際の答弁*。
「マクロ経済スライド」という言葉を実に9回も連呼しながら、論点のすり替えや厚顔無知話法(質問と関係ない話を延々と続けて、耐えかねた野党議員が抗議の声をあげると
オーバーリアクションで反応し、あたかも野党議員が答弁を妨害しているかのように装う手法)を繰り返した。
〈*「
マクロ経済スライドと9回も連呼した安倍総理。蓮舫議員による6・10年金質疑を信号無視話法分析」〉
こうした例を挙げればきりがない。
総理がこうした振る舞いを平然と続けるのは、本人に政策についての意思が無いことが根底にあるように思う。強いて言えば、唯一、私が総理から感じ取れた意思は「
憲法改正」。母方の祖父である岸信介元総理が成し遂げられなかった悲願を果たしたいのか、この一点だけは強い意思を感じる。だが、意思を持っている分、原稿用紙に書かれていないことやその場しのぎの嘘を安易につくため、2019年2月13日の答弁*では大惨事を引き起こした。
〈*「
【お父さん、憲法違反なの?】本多平直vs安倍晋三総理 2019年2月13日衆議院予算委員会」〉
意思を感じず、具体的な政策ビジョンもない安倍総理。だからこそ、一度は健康問題を理由に辞職した人間が総理の座に返り咲くという不自然な筋書きが現実になったのだろう。それは、安倍総理が持つ唯一の意思である憲法改正と利害が一致する者たちによって後押しされた可能性が高いとしか思えないのだ。
<文/犬飼淳>
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@jun21101016
いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身の
noteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。
noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(
日本語版/
英語版/
仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。