晩婚も少子化も、人々の中で当たり前のことになりつつある現代。多様化した選択肢の一つとして「結婚を選択しない道もある」と、未婚の我々の背中をさするかのように「AK(あえて結婚しない)女子」という造語が生まれたり、「東京独身男子」のようなおひとりさまドラマが流行したり。
そういうコンテンツに勇気付けられて、なんとなく未婚のままの自分を肯定できることもある。けれど鏡の中の自分を見つめると、何年か前よりもほうれい線が濃くなっていて、心の声はまじまじとこう言い放つ。
「本当にそれでいいの?」
焦らなくてもどうせ、晩婚の時代。それでも、青春時代に認識した”結婚適齢期”というやつはちゃんと自分の中に存在していて、どれだけメディアやコンテンツが「大丈夫だよ。AK、AK☆」と発信していても、心の片隅にある焦燥感は消えない。未婚でいい・晩婚が当たり前らしい現状と、子供の頃は当たり前だった「幸せは結婚と子育ての中に」という刷り込みとのダブルスタンダードに苦しんでしまう。
一般に、男性は幼い頃から「いい大学を卒業して、大企業に入ることで成功できる」という刷り込みを、親やテレビ、漫画などから受けている。しかし、学歴だけ持っていても結婚できるとは限らない。それなのに真面目に勉強してきた人ほど、結婚というある意味昔ながらな幸せを諦めることが難しいのだ。
「学歴もあるし、そこそこいい会社で働いていると思う。でも、自分がモテないという自覚はある」
そう語るのは、国立大学を卒業後、キー局本社に入社して6年目の小野さん(仮名)だ。出身は北関東だが、中学からは都内の有名な中高一貫校に通っており、大学入学も就職もストレートで実現。いわゆる「ハイスペック男子」である。
前田さん(仮名)
「高校生の頃からニュースが好きで、就職は報道関係一択だった。好きなことを仕事にできて、かつ給料もいいとなったら、この業界を目指さない理由がなかった」
好きなことを仕事にしていて、かつ楽しんでいる小野さん。女子からもウケが良さそうなスペックなのに、私生活は充実していないという。
「今までの彼女は二人だけ。中高男子校だったから遅咲きなのもあるけど、控えめに言っても恋愛の機会が多いとは言えなかったと思います。大学生活は好きなことを勉強できて楽しかったけど、全然モテなかった。
大学2年生の時初めて彼女ができて、男子校時代は妄想でしかなかった女のコを、初めてリアルな存在として実感できたことは思い出深いです。それでも半年しか付き合えなかったけど……。”高学歴は卒業したらもっとモテるから”という先輩たちの言葉が、就職活動の一番のモチベーションでした」