自らを”非モテ”と自覚しているという前田さん。しかし女性から全くモテない、という風には見えない。爪が整っていたり、太りすぎていなかったりと清潔感があって、外見は”フツメン”という感じだ。その上高学歴で安定企業で働いているというのに、全くモテないなんてことがあるだろうか。……単純に本人の理想が高いという可能性もある。
「もちろんかわいいコだったら嬉しいけど、それ以上に”話が合う人”がいいなと思うようになった。社会人になってから付き合った彼女は、同期のアナウンサーに紹介してもらったコで可愛いコだったけど……興味の幅が合わず、何を話したらいいか分からなかった。
今も合コンや相席居酒屋などに行って、出会いを探しています。ただ、いっぱしに社会人やっていれば、誰でもそれなりに仲良くなれると思うんですよ。でもそれ以上に”めちゃめちゃ気が合う人“を探すのは難しい。性欲を掻き立てられることはあっても、胸が高鳴ることがないんです」
外見や相手のスペックにこだわるつもりはなく、ただただ価値観が合う人を求めているだけなのに、それでもいい人はいないという。合コンの帰りにワンナイトラブが起きることが時たまあっても、お互いなんとなくそれきりになってしまうことが多いそうだ。
遊んでみても尖りきれない、生真面目な高学歴男子の苦悩
「社会人になってからは、学生の時よりも女性に認めてもらえるようになって、5人ほどワンナイトを経験できました。自分にもそういうことができるという自信はついたけど、ワンナイトラブはあと何度やっても、同じことの繰り返しなんだろうなという悟りもあります。
結局真面目にやってきたから、尖りきれないんですよ。悪ぶって遊んでみても、清く正しいものへの羨望も拭えないのは、きっと高学歴あるあるだと思います。学歴とかなくても反骨精神強いやつらの方が、もっとぶっ飛んでると思う。男子校で培ってしまったメンタル童貞的な部分もあって、結局はトゥルーラブを求めてしまう」
ワンナイトの経験もあるというのだから、根っからの草食男子というわけでもないのに、女遊びにはどこか虚無感を感じてしまう。本気の交際を望んでいるものの、なかなか気が合う人に巡り会えず、彼女として交際するまでに至れないという。こうして恋愛のことを語ってもらうと、非常に系統立てて話をしてくれるので、普段から自己分析をよくしていることが伺える。
全く女性経験がない、というわけではないながら、自らを”非モテ”と言い切るのは、頭がいいからこそ自惚れたくない、自分に正しい評価を下したいという生真面目さからだろう。
「テレビ業界の人たちって、世間よりも晩婚。30歳くらいじゃ全然遊んでるし、40歳過ぎた頃にやっと、さすがに需要が減ってきたことに気づいて焦って結婚する人が多い。そういうおじさんたちのことをかっこ悪いなと思う反面、自分もまだ妥協することができていません。
男子校時代の友人たちを見ていても、マスコミや商社のような、華やかな業界に行ってしまったヤツは結婚してないヤツばかり。中途半端に遊べてしまったことで、まだほかにいるはずという期待をするようになっちゃうともうダメですね。最近はもう、好きな人すらずっといないです」
都会に生き、彼女欲しさに合コンに通う。それは理にかなっているようで、実は自分のクビをしめているのだ。あまりにもカジュアルに出会えすぎてしまうからこそ、一人ひとりの出会いの重みもなくなる。都会ではあまりに、多くの人と出会えすぎてしまう。もっといい人をと思えば、世界人口35億人…きりがない、というワケだ。
ハイスペで高学歴。結婚願望もあるのに、好きな人が作れない。真面目がゆえの苦悩であり、「AK」を割り切れないアラサーの一つのリアルを垣間見た。
<取材・文/ミクニシオリ>
1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携ったのち、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。