まちゃー / PIXTA(ピクスタ)
7月まで雨ばかりで涼しかったのに、梅雨明け以降は一転して暑い日が続いています。この新型コロナウイルスは寒い方が活発になるため、夏には感染の勢いが抑えられると考えられていましたが、どうやらまったくそんなことはなく、みんなが気を付けなければ感染は拡大する一方だということがわかりました。今は常夏の沖縄県で感染が拡大傾向にあり、政府が反対を押し切ってまで進めた「GoToトラベルキャンペーン」が、沖縄に地獄を作ろうとしています。
今、日本で最も新型コロナウイルスが流行している都道府県は「沖縄県」だと言えるかもしれません。人数だけで言えば東京都がダントツで多いのですが、そもそも東京都には1000万人以上が暮らしているので、その中の200人や300人というのは、さほど大きな数字ではないということになります。8月11日までの情報をもとに、10万人あたりの感染者数で換算すると、1位は沖縄県の28.5人、2位が東京都で13.1人、3位が福岡県で12.4人、4位は大阪府で11.9人です(参照:
日本経済新聞 チャートで見る日本の感染状況)。大都会がズラリと並ぶ中、沖縄県が1位になってしまった背景には、一体、何があるのでしょうか。
沖縄県では、5月28日に最後の感染者が見つかって以来、7月8日に新規感染者が2人見つかるまでは、ほぼ終息していました。その後もしばらく少ない状態が続いていて、7月23日頃から少しずつ増え始め、7月29日頃には本格的に増え始め、今も新規感染者は続々と見つかっています。一般的にウイルスに触れてから発症するまでは5日程度だと言われているので、感染している人の多くが7月22日以降にウイルスに触れたものだと考えられます。
7月22日と言えば、政府が国民の反対を押し切って「
GoToトラベルキャンペーン」を始めた時期と重なります。今年は、多くの国で旅行目的での入国を拒否していることもあり、いつもなら海外旅行に出かけるようなセレブが行き場所を失い、沖縄に殺到。政府が進める「GoToトラベルキャンペーン」も沖縄旅行をアシストしました。沖縄県は感染拡大を受け、7月31日に県独自の「緊急事態宣言」を発出。県外からの沖縄旅行を自粛してもらうようにお願いをしています。
しかし、自粛はあくまで「お願い」であって、沖縄県が独自に「緊急事態宣言」を出したところで、「沖縄県のためにやめてあげよう」なんて思うヤマトンチューはそう多くないでしょう。もし多かったら辺野古の基地移転問題ももっと声を上げる人間が多いはずです。
キャンセルすればキャンセルしたでキャンセル料がかかるわけですし、日頃から自粛生活に勤しみ、同僚と居酒屋で一杯やることも控えるような生活をしている中で、せめて家族の思い出ぐらいは作りたいという人もたくさんいます。そして何より、いくら沖縄県が自粛をお願いしても、政府は「どんどん旅行に行け!」と言っているわけです。どうせ沖縄旅行と言っても、リゾートホテルのプールを利用するぐらいで、あとは沖縄名物のステーキやゴーヤーチャンプルーをちょっと食べる程度。現地で密になるようなところに行かなければダイジョブダイジョブという理論です。
ところが、沖縄県は医療体制が充実しているとは言い難いものがあります。特に、リゾート地として人気の石垣島や宮古島は、島でパンデミックが起きた時に病院で対応することはできません。普通の病気ならカバーできても、大量に押し寄せる新型コロナウイルスの感染者を受け入れられるような体制は整っていないのです。それに、もし東京都で感染者が溢れても、近隣の千葉、神奈川、埼玉などに協力を要請し、場合によっては病床を確保できるかもしれませんが、沖縄県は一つだけ離れたところにあるため、溢れた感染者をそう簡単に他県に移すことができません。沖縄は今、正念場に立たされていしまったのです。