「同棲している彼氏がなかなか結婚してくれなくて困ってるんだよね」ヘテロセクシュアルの友人は言った。「まだ結婚してないのに、私ばっかり家事をしているなんて、タダ働きさせられているみたいな気分」
つまり、結婚しているということは、家事を全面的に押し付けられても、タダ働きと感じないということなのだろうか?
結婚制度に包摂されていたとしても、多くのことに縛られることになる。ここでのキーワードは、性別役割分業・ロマンティックラブ・イデオロギーだ。
まず
性別役割分業とは、昔ながらの「男は仕事、女は家庭」という固定的な男女の役割分業のことをいう。そんなものは、もうすでに古いとおっしゃるかもしれない。しかし、夫婦2人の世帯では妻の家事時間が夫の2.6倍、子どものいる世帯になると妻の家事時間が夫の2.8~3.6倍、育児時間は2.1~2.7倍に上るという2020年のデータがある(※2)。ちなみに単身世帯では男女の家事時間に差がない。性別役割分業が、結婚という制度に支えられている現実が垣間見える。
次に注目したいのが、
ロマンティックラブ・イデオロギーである。ロマンティックラブ・イデオロギーとは、「一生に一度の相手と恋に落ち、結婚し、子どもを産み育てる」という物語であり、愛と性と生殖が結婚を経由することによって一体化したものである。これは、本来多様なありかたがあるはずの人生において、一定のライフコースを規範化してしまう力を持っている。結婚して、さらには子どもを作っていないと、「何か理由があるんじゃないか」「お気の毒に」と周囲や親に詮索されたり心配されたりすることになる。このようにして、モノガミーの異性愛者でさえも、結婚制度に縛られているのである。
(※2)
『令和2年版 男女共同参画白書』
結婚制度は廃止できるのだろうか。おそらく難しいだろう。現在、結婚制度はあまりにも深く社会に根付いており、また特権を得ている人々の数も多い。民主的な手続きを持って結婚制度を廃止することは到底できないだろう、といわざるを得ない。
それでは、何が次善の策になるだろうか。結婚制度が本質的に差別的・抑圧的なのであれば、一体どうすればよりマシな結婚制度にすることができるだろうか。
まず、
結婚制度から排除されている人々を包摂することである。同性婚の法制化がその最初のステップになるだろう。
そして、
結婚の在り方を多様化して結婚制度に包摂されている人々のライフコースの縛りを緩めることである。友人同士の結婚、契約結婚、事実婚など様々な結婚の在り方があり得る。
いま全国で5件の同性婚訴訟が争われている。また世論においても、2019年の電通調査によると20~50代の8割近くが同性婚に肯定的だという(※3)。まさに同性婚に向けての風が吹いているといってよい状況だろう。
ここまで述べてきたように、同性婚が認められるべき理由は、認めないことそれ自体が同/両性愛者差別でしかないからだ。異性カップルを特権化・規範化し、同性カップルの関係性を価値のないものとして貶めている。結婚制度から排除された人々を包摂するために、第一にすべきことは同性婚の法制化であるはずだ。
この風のなか前に進むために、力を合わせようではないか。NPO法人
EMA日本のサイトでは、ネット署名もできる。これからのよりマシな社会のために、よりマシな結婚制度を作っていこう。
(※3)
「同性婚合法化、8割が肯定的 電通調査の20~50代」2019年1月12日 朝日新聞
<文/川瀬みちる>