五輪決定時の熱狂は幻と消えるのか 写真:産経新聞社
コロナ禍により今夏予定されていた東京五輪が翌年に延期された。そして7月5日、小池百合子東京都知事は再選後の会見で五輪開催についてこう話した。
「東京オリンピックはコロナの感染防止を考慮しながら簡素化してやっていけるようにします。都民のみなさん国民みなさんの納得いただけるようなかたちで、開催できるように進めていきたいと思っています」
スポーツライターの小林信也氏は、この小池都知事の意気込みをバッサリと切り捨てる。
「小池都知事は『3密は避ける』と言っていますが、スポーツは3密そのものなんです。オリンピック精神というのは、言わば3密を礼賛しているわけです。選手たちの距離を縮めて、肉体的にも精神的にも世界中の距離を縮めましょうというのがオリンピック・ムーブメントです。そもそも新型コロナがあったらオリンピックなんかできるわけがない」
今も都内では1日200~400人単位で新型コロナウイルスの新規感染者が出ている。そして各地を豪雨が襲い、被災者も出ている状態だ。来年、東京五輪は本当に開催可能なのだろうか。小林氏は簡素化して開催されたことを前提に、具体案に言及する。
「冷静に判断すれば、種目の削減も仕方ありません。柔道、レスリング、ボクシングなど相手と密着する競技は安全性が確保できるのかという議論が真剣になされるべきだと思います」
接触しない競技といえばアーチェリー、ウェイトリフティング、カヌーなどだろう。野球のようにボールを投げ合う競技も、感染者が発生した場合はクラスターになりかねない。
「できない競技は必然的にありえます。けれどIOCはコロナで競技を選別し、一部を除外することはしないと思うんです。そうなると結局オリンピックはできない。中止という判断もありうるでしょう」。
簡素化と一口に言っても、実際にはそれによって想定されるリスクが多岐にわたる。
「まず、大会の収支に大きく影響します。感染リスクを抑えるため入場者数を制限すれば、約850億円と想定されているチケット収入は大幅に減少するでしょう。また、簡素化による広告効果の減少を懸念して、スポンサー契約も集まらなくなる。そうすれば、広告収入も減り、損害のほうが大きくなりかねません」