リニアについて吉村洋文・大阪府知事は「進めていくべきです」と回答
7月29日の府知事会見でリニア推進を訴えた吉村洋文・大阪府知事
JR東海が2027年の品川-名古屋間開通、2037年の名古屋-大阪間延伸を掲げていたリニア中央新幹線計画。「静岡県との協議が難航し、大阪延伸の先送りは避けられない」などと報じられている。
この計画について、大阪府の吉村洋文知事はどういった考えを持っているのだろうか。7月29日の府知事会見で、吉村知事に質問した。
――リニア新幹線について(7月)16日の会見で(吉村知事は)「国家の経済力を高める」「国が実行できるルールづくりをするべきだ」とおっしゃいました。一方で川勝平太・静岡県知事は、(トンネル工事による)水枯れの問題、「62万人の県民の命が関わっている命の水だ」と言いながら、コロナ禍におけるリニア計画について疑問を提示しました。
安倍総理がリモートワークを進めていることから(リニアの)必要性・採算性を疑問視していますが、吉村知事はアフターコロナ時代においても「リニア新幹線が国家の経済力を高めて、進めるべき」と考えているのでしょうか。それ自体を再検証する考えはないのでしょうか。
吉村知事:リニア新幹線については、東京と大阪を1時間でつなぐというまさに大動脈になります。これは「国家の国力を高める」という意味で、この時間で東と西の拠点をつなぐというのは、まさに国力、国家、日本の成長そのものにつながってくると思っています。
だから、もちろんコロナにおいていろんなリモートワーク等々はどんどん広がってくるとは思いますが、こういった強力なインフラづくりは並行して進めていくべきものだと思っています。
――コロナ禍で乗客数が減り、赤字垂れ流しのリニアになる恐れについては検証・チェックする必要はないということですか? 「カジノも依然として進める」と言われましたが、コロナ禍において時代が変わったことを受けて、チェック・再検証する考えはまったくないということなのでしょうか?
吉村知事:今はコロナ禍の状況にあります。だから「移動を自粛すべきだ」というのもありますし、当然、新幹線の利用は減っていると思います。しかしコロナも未来永劫ずっと続く、ウイルスは存続するかもわかりませんが、ワクチン・治療薬等で対応ができるという時期も必ずやってくると思います。
そうなったときには、当然人々の移動が自由になってくるわけです。人々の移動が自由になったときには、より迅速に的確に大都市間の移動ができる(リニア)新幹線は、国家50年・100年の計で見たときには必要だと思います。進めていくべきです。
吉村知事がリニア推進論を口にした2日後の7月31日、JR東海は2020年4~6月来連結決算の最終損益が1313億円の黒字から726億円の赤字に転じたことを発表した。
稼ぎ頭である東海道新幹線の利用客が前年同期比で84%減となったのが原因だった。コロナ収束までは赤字が続くのは確実で、収束後もリモートワーク拡大などで新幹線利用客がV字回復する保証もまったくない。
約9兆円をかけて東京・大阪間のリニアを完成させても、コロナ前の想定乗客数には遠く及ばず、JR東海が経営破綻する可能性も十分にある。その場合、総事業費の3分の1が国の融資であるため、3兆円が焦げついて国民負担(税金の浪費)となる。こうしたリスクについて吉村知事は直視しようとしていないのだ。
※なお吉村知事について、筆者は完全に批判的な立場というわけではない。小池百合子都知事のように会見で記者を選別・排除することなく、あまり答えたくないであろう質問に対しても「全員指名方式」で対応している点について、非常に評価している(これについては新著
『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』で紹介)。