簡単な修繕は自分で行うという竹内氏。「安く落札できても貸すまでにお金がかかってしまっては元も子もないので注意が必要です」
コロナショックを受け、全国の裁判所では競売の入札日程が停滞を余儀なくされている。先行き不透明な状況ではあるが、そんな有事にこそ新規参入者の追い風となる――
コロナ不況の足音が忍び寄り、住宅ローンの支払いに不安を覚える人が増えている。一方、差し押さえられたマイホームの終着点となる競売市場では手練れの投資家たちが臨戦態勢で待ち構えている。
「新型コロナウイルスによる不況がくれば、おのずと競売市場にも出物が増えます。いい物件があれば積極的に狙いたいです」
そう虎視眈々と投資チャンスを窺うのは無借金で競売物件18戸を所有、月100万円以上の家賃収入を得る不動産投資家の竹内かなと氏。リスクが伴う「玄人向け」の印象がある競売物件だが、投資の要諦はどこにあるのか。奈良県を拠点に15年以上、競売物件への投資を続ける達人は独自のポジション取りの重要性を説く。
「業者さんや競売のプロは転売の値幅が取れる高価格物件を狙いますが、僕は数百万円で買える戸建て専門で、プロの転売屋とは競合しないポジションです。あと、なるべく人が住んでいる物件には手を出しません。誰かが居座っていたり、何かしらの瑕疵があったりする物件のほうが『難易度が高い分、ライバルが減ってより安く買える』と業者さんたちは喜びますが、僕は逆です」
’19年11月に竹内氏が落札した最新の物件。屋根には太陽光パネルがあり、月約1万円の収益を生む
訳あり物件の場合トラブル、最悪、刺されることも!?
竹内氏が競売一本でコツコツ物件を増やすことができたのは、こうした経験則からくる「生存戦略」が奏功している。
「面倒な物件は仮に安く落札できたとしてもその後が大変で、時間や体力、気力を奪われる可能性が高い。そういった揉め事は最も避けたいので、現地調査を徹底して行います。入札までに近所への聞き込みを複数回行って、勝手に変な人が住んだりしてないかチェックするようにしていますね」
かつて所有していた区分所有物件。「維持費がネックで手放しましたが、落札価格322万4000円の物件が500万円で売却できました」
住宅ローン破綻だけでなく、企業倒産に端を発して差し押さえられる物件なども競売では珍しくない。そのため、“ワケあり”のケースがあり、トラブルに発展するリスクも勘案する必要がある。
「一般人だと思った住人が実は怖い人で脅してくるのは序の口。なかには強制執行当日に占有者に刺された人もいますし、競落後に占有者が焼身自殺をした物件もありました。自分も入札していた物件もありました。我がことだったらと思うとゾッとします」