そんな競売投資の酸いも甘いも見てきた竹内氏が競売に参入したのは’05年。それ以降、競売物件投資はブームとなり、落札価格が高騰傾向にあるが、今後も競売で不動産を買うつもりだと口にする。
「単純な利回りの比較だと最近では競売が有利とは限りませんが、それでも競売一本でやるのは何より性格的に向いているためです。一般市場でいい物件を手に入れるには、いかにして不動産会社と良好な関係を構築して未公開物件情報を手に入れるかの勝負。僕のように人付き合いが苦手な人間は業者と濃密なやり取りをするより、淡々と事務的なやり取りをする競売のほうが性に合っています」
地方では駐車場が必須。「できれば2台。3台停められる物件ならその地域で一人勝ちできる可能性も」
投資対象として肝心な利回りもかつてと比べると見劣りするものの、現在でも十分に魅力的だ。
「僕が競売物件への投資を始めた’05年くらいがすごくいい時期で、売れ残りの物件を落札し、何もせず貸しただけで利回り30%になったこともありました。ここ数年、落札した物件だとおおよそ15~20%ほどです。ただ、利回りももちろん大切ですが、最近は近場の物件に絞って入札をしています。事情のわかるエリアだと安心感がありますし、近いと管理がラクなので余裕が違ってきます」
物件も大規模な修繕を必要としない比較的新しいものを選ぶようにしていると明かす。
「平成以降に建てられた小ぎれいな物件を狙うようにしています。設備の規格や仕様が今の新築と共通していて、表面的なリフォームだけで貸せるのが何よりの利点。多少、入札価格が高くなっても、ボロい物件を4万円で貸すより、見栄えのいい物件を8万円で貸したほうが効率がいいですしね。例えば、4年前に516万円で落札した当時築20年の戸建ての場合は諸々の修繕にかかった費用は41万円ほどでしたが、これが昭和の物件だったらもっとかかっていたはず。この物件は結局、月8万円で貸しているので、利回りだと16%ほどになっています」
玄関に大きな木がそびえ立っていた落札物件。こうした物件内外の整備に必然と手間がかかる
大きな可能性を秘める競売の世界。参入の際は裁判所の物件情報を探すことか、全国各地の競売情報を一度に検索できるサイトを利用し、入札物件を探すことになる。
「競売物件ならではの手続きの流れもありますし、地域ごとの特性もあるので、入札前に競売経験者に助言を求めることがおすすめです。地域ごとに『大家の会』があるので、まずは相談してみましょう。『物件を持ってないのに大家の会に行ってもいいの?』と思うでしょうけど、皆さん優しいので飛び込んだほうがいい。最初はどうしても『物件が欲しい』という気持ちが強く出て焦ってしまいがち。周囲の人のアドバイスを参考にしながら、常に引き返せる範囲の金額で購入して、人生を賭けるような勝負はしないことも大切です」
不況時にこそ輝く競売投資。未曽有の事態も新規参入者にとっては好機になりうる。
パッと見がきれいでも実際に住む前にネックになるのが家の傾き。落札後は専用の装置を使い測定し、その状況に応じて対応策をとる
落札を検討する際に注意すべき物件の基礎部分のヒビ。「地盤沈下により生じるヒビは深刻な事態を招くことがあるため要注意です」
【竹内かなと氏】
大学卒業後、ネットオークションで自作の自動車部品を販売した資金を元手に不動産投資業に進出。現在は奈良県内に18物件を無借金で保有、手取り家賃は月100万円を超える
<取材・文/栗林 篤>