店で仮眠、時給420円の日々。元クラブ店長が明かすブラック職場の実態

保険証もなく病院にも行けない

 わずか14万円の給料に、帰らない家に払う7万円の家賃、さらには店の売り上げの補填も重くのしかかり、生活は困窮していきます。「家賃が支払えなくなって滞納するようになっていましたし、体を壊しても、保険証がなかったので、お金がなくて病院にもいけませんでした」と蓮尾さんは語ります。  雇用主は株式会社であったため、従業員を社会保険に加入させる義務を負っているはずなのに、社会保険に加入させてもらえていない違法状態だったのです。「39度の高熱が出て、インフルエンザの疑いがあった時も店に出て働くしかなかったんです」。  はたから見れば、どうして辞めないのかと思うかもしれません。しかし蓮尾さんは辞められなかった理由について「何も考えられなくなってたのもそうですけど、その会社はライブハウスやクラブを何店舗かやっているので、干されるかもしれないと思ったんです」と当時を回顧しました。大好きな音楽の世界から追放されてしまうかもしれないという恐ろしさは、精神的に追い詰められた蓮尾さんにとって、巨大なものだったのです。

辞めるきっかけ

 そんな中、お店のパソコンが故障します。当然のように修理費用は蓮尾さんの負担。パソコンを修理に出し、その間の業務を私用のiPadで行なっていたのですが、それを知った社長が激昂し「ふざけんな!お前の金でパソコン買い直せ!やる気あんのかよ!」と怒鳴られます。それに対し蓮尾さんはついに「もう無理です」と返答。すると社長に即時解雇を言い渡されました。  解雇には合理的な理由と30日以上前の予告が必要ですが、もちろんそんなものはありません。しかも「僕個人のツイッターアカウントを、消すように言われたんですよ。イベントでお世話になったDJさんとかもたくさん繋がってたんですけど、お礼も言わせてもらえず、社長の目の前で消させられました」と話します。過去の店長たちが飛んだように思われていたのは、こういうことだったのです。

クラブを志す後進へ

 一時は、東京で音楽をやれないかもしれないとまで思ったといいますが、「今は、小規模ですけど自分のバースデーイベントとかもできるようになりました。勤めていたお店の近くのクラブで(笑)」と蓮尾さん。  現在はアルバイトをして滞納していた家賃も完済したそう。この先「クラブで働きたい」「クラブの店長になりたい」と思う人へのメッセージを伺ったところ「すべてのクラブが同じというわけじゃないんですけど」と前置きした上で「本当に好きじゃないとできないです。そして生活は大事ですよ」と教えてくれました。  好きなものだからこそ、不当でブラックな扱いをうけても飲み込んでしまう。その先に、過労や精神の病気が起こるなどしてしまい、好きなものが嫌いになってしまうことほど不幸なことはありません。勢いだけでなく慎重に選んでいくことも重要なようです。 <取材・文/Mr.tsubaking>
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