暑さ対策をするうえで必要なのが、ヒトはなぜ「涼しい」と感じるのかを知ることだ。ヒトの皮膚には温度を感じるセンサーがあり、それによって暑さや涼しさを感じられる仕組みになっている。このセンサーは「温度感受性(TRP)チャネル」(トリップチャネル)と呼ばれ、ヒトはこのチャネルの反応によって温度を認識し、体温の調節を行う。
調査を実施したマンダム広報の五嶋善晃氏によると、TRPチャネルにはいくつか種類があり、ものによって反応する温度帯が異なり、冷感を感知するのは「TRPM8」(トリップエムエイト)という冷感センサーだという。つまり、真夏に涼しさを感じるためには、TRPM8を反応させればよいことになる。
「そのための方法には『肌の温度を下げる』と『清涼成分で刺激する』の二つが挙げられます。前者の代表的な対処は、冷たいペットボトルを体に当てることです。ちなみに鼻には冷点と呼ばれる冷たさを感じる感覚点が多く存在しているといわれています。」(五嶋氏)
では後者の「清涼成分で刺激する」とはどういうことなのか。五嶋氏は「ハッカやミント味のお菓子などを食べると、それ自体は冷たくないのに『なんだか冷たいな』と感じたことはありませんか?これはハッカやミントに含まれるメントールという成分がヒトの冷感センサーを刺激し、実際に皮膚が冷たいと感じる時と同様の信号を脳に送るために起こります。もっとわかりやすく言うと、脳に冷たいと勘違いさせるわけです」と説明。
また五嶋氏によれば、個人差はあるものの、柑橘系の香りは清涼感を感じやすいそうだ。
それらをふまえて五嶋氏は、夏場のマスク着用で清涼感を得るための工夫として次のようなやり方を教えてくれた。
「マスクを着ける前に、メントールが配合された化粧水を顔に塗ると清涼感が得られて良いですね。それだけではなく、冷たいペットボトルを顔のマスクで隠れている部分などに当て、実際に皮膚の温度を下げることも効果的です。
また汗で口元に不快感を抱くようになったら、こまめにメントール配合のフェイシャルペーパーなどで、顔を拭き取ります。ただ注意点があって、清涼成分での刺激は脳に『冷たい』と思わせている状態なので、熱中症の対策は別途必要です。水分補給や休憩を意識してとるようにしましょう」
なおクールハックについては、マンダムの社員有志が「清涼部」を立ち上げ、夏を乗り切るヒントを発信している。
涼しさを感じる仕組みを知り、暑い時期のマスク着用を快適なものにしていきたい。
<取材・文/薗部雄一>