緊急執筆! 地方新聞の一面を飾る「検査をすると患者が増える」エセ医療デマゴギーの実例
実際に金井仮説を評価してみる
一体このエセ医療・エセ科学デマゴギーの出所はどこか?
ここで発言者の室月淳博士は、このように定義しています。 「仮にこのPCR検査の感度を90%,特異度を90%とします(よく知りませんが,実際はさらに低いかも).」 実は、この特異度、感度に関するおかしな値では、特異度はいろいろ動くのですが、感度が大概70%です。感度90%は珍しいほうで、どうやら2月の早い時期から産婦人科医の間でPCR検査の特異度・感度について、感度を90%とした「事実から乖離した変数」が出回っていたようです。 特異度は90%より低いかもしれないと言及されていますので、流言の伝搬の過程で陽性的中率がピタリ40%になる特異度85%とピタリ50%になる特異度90%の二つのうちより悪い方が採用され伝搬したものと思われます。 さすがにこれ以上遡及するのに筆者は意味を見いだし得ませんので室月博士におかしなことを吹き込んだのが誰かは分かりません。一つの可能性として、産婦人科系学会の中で特異度85%、感度90%で、罹患率10%なら、陽性的中率40%、陰性的中率99%という独自のエセ医療・エセ科学デマゴギーが2月頃から伝搬していたものと思われます。 本来ならば、すぐに誰かが検算したり、実際の統計と照合してこのような誤った情報は早期に止めてしまいます。少なくとも理学系、工学系の学会では、ここまで程度の低い怪情報は、早期に一笑に付して止めてしまいます*。 〈*実は今問題となっているリニアモーターカーの開発の原点となっている、粘着式鉄道では時速330km程度が限界という本邦鉄道系学会での定説があった。ところがフランス国鉄がアッサリ粘着式鉄道で時速350kmをこえ、遂には500kmまでだしてしまった。この粘着式鉄道時速330km上限定説を誰が言い出したのか全く分からないことになり、いつの間にか消えてしまったが、そのときにはリニア山梨実験線建設が始まっており、コンコルドの誤謬が今に続いている。この手の誤った情報により学会が汚染され取り返しの付かないことになる事例は工学系でも多い。この粘着式鉄道時速330km上限定説は、昭和50年代までの専門家の監修による児童向け鉄道図鑑、科学読み物には必ず記載されている。筆者の手元では、学研まんが「できるできないのひみつ」内山安二p29に実物を見ることができる。歴史を消すことはできないのである〉仮にこのPCR検査の感度を90%,特異度を90%とします(よく知りませんが,実際はさらに低いかも).しかし検査をうける本人にとって真に重要なのは感度や特異度ではなく,検査陽性のとき実際に感染している割合(陽性的中率),または陰性のときほんとうに感染していない割合(陰性的中率)なはずです
— 室月淳Jun Murotsuki@集英社新書「出生前診断の現場から」 (@junmurot) February 24, 2020
この連載の前回記事
2020.07.22
ハッシュタグ