大手日本企業と、少数民族を迫害するミャンマー国軍との不都合な関係

ロヒンギャ

少数民族、ロヒンギャに多くの人権侵害を行うミャンマー国軍。その系列企業とのパートナーシップを組む日本企業の存在は国際的にも問題視されている
photo by DFID – UK Department for International Development via flickr (CC BY-SA 2.0)

 1885年にジャパン・ブルワリー・カンパニーとして創業して以来、キリンホールディングスは世界で最も知られている日本のブランドのひとつとなった。日本に住んでいる人はもちろん、旅行で来日した人にも同社の存在感は一目瞭然だ。街角、地下鉄、自販機、そしてテレビなど、ありとあらゆるところにキリンの広告が存在する。

軍系企業と「キリン」の繋がり

 同社は梅酒やヨーグルトなど幅広い商品を売りにしているが、やはりトレードマークの商品は40カ国以上で販売されているビールだ。そのビールには、キリンの特徴的なシンボルが記されている。それは「聖獣麒麟」であり、同社は「幸せを運び、よろこびと共にある」と定義しているのだ。(参照:KIRIN)  たしかに、キリンのビールというと、多くの人にとってはよい思い出が浮かび上がるかもしれない。しかし、ミャンマーの少数民族の人びとにとってはどうだろうか。ラカイン州のロヒンギャを含む少数民族に対して、数十年も深刻な人権侵害を展開して来たミャンマー国軍と事実上のパートナーシップを組んでいるキリンが、「幸せを運んでいる」とは言い難いのではないだろうか。  2017年8月以降、ミャンマー治安部隊が民族浄化を展開し、ラカイン州のロヒンギャ・ムスリムに対して、殺害、性暴力、強制退去をはじめとする数多くの人道に対する罪を犯した。その結果、過去2年間で74万人超が隣国のバングラデシュに国外脱出した。今でも、世界最大規模の難民キャンプで劣悪な生活を強いられている。  2018年に国連が設置した事実調査団(以下、「FFM」)は、軍による残虐行為が「戦争犯罪および人道に対する罪のレベルに達した」との調査結果を報告した。同年10月にFFMのマルズキ・ダルスマン議長が、ラカイン州の事態は「進行中のジェノサイド」に相当すると述べている。

ミャンマー国軍系企業との合弁事業

 国際社会はこれらを受け、ミャンマー政府や国軍、そして人権侵害に関与した人びとの刑事責任を問うために行動を起こしている。アフリカ大陸最小国であるガンビアは、ミャンマー国軍によるロヒンギャ迫害はジェノサイド(民族大量虐殺)条約の違反として、国際司法裁判所に提訴した。同裁判所は、今年1月にロヒンギャに対するジェノサイドを阻止すると同時に、虐殺の証拠保全をミャンマーに命じた。(参照:BBC NEWS JAPAN)  去年11月には、国際刑事裁判所がロヒンギャに対する迫害を「人道に対する罪」で正式な捜査を開始することを決めた。ミャンマーはICC非加盟国であるが、国外追放など一部の非人道的な行為が同裁判所の加盟国であるバングラデシュで発生したため、この問題ではICCの管轄権が働いた。(参照:日本経済新聞)  キリンは2015年にミャンマー国軍が所有するMEHLとの合弁事業提携により、ミャンマー・ブルワリー社の株式の55%を買収した。その後、キリンは発行済株式総数の4%をMEHLに譲渡。続いて2017年には、MEHLとの別の合弁事業でマンダレー・ブルワリー株式の51%を買収。キリンは、ミャンマービール市場の8割を独占している。  FFM は2019年9月の報告書で、キリンとMEHLの合弁事業に触れたうえで、ミャンマー国軍ならびにMEHLを含む軍系企業と関係する「あらゆる外国の企業活動」が、「国際人権法および人道法違反に寄与あるいは関与するリスク」を負っており、「少なくともこうした外国企業がミャンマー国軍の財政能力を支援している」と結論づけた。FFM は、国際人権法および人道法の現在進行中、そして今後の違反を阻止するために、軍の「財政的孤立」を強く求めている。
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MEHLとの関係はキリンが掲げる人権方針にも反する
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