労働基準法では、会社側の都合で労働者を休業させた場合、平均賃金の6割以上を支払わなければならないと定めている。それなのに、なぜ休業手当の支払いを拒否することができるのだろうか。
首都圏青年ユニオンの原田仁希執行委員長によると、会社側は「アルバイトは毎月シフトを組んで働いている。まだシフトが決まっていなかったため、休業に当たらない」と主張しているという。
「企業が休業手当の支払いを拒む背景には、雇用調整助成金の問題があります。大企業でも、飲食業の場合はコロナウイルスの感染拡大でかなりのダメージを受けています。雇用調整助成金が最大で75%しか出ないため、会社側の負担が大きくなってしまうのです」
企業が従業員に「休業手当」を支払うときには、国がその一部を負担する雇用調整助成金という制度がある。厚生労働省は6月12日、助成額の上限を1日8330円から15000円に引き上げた。さらに中小企業への助成率を最大で100%まで拡充した。
一方、大企業では、助成率が最大75%に留まっている。そのため負担を嫌う企業が、休業手当の支払いを逃れようとすることがあるのだ。原田委員長は、「コロナウイルスの影響を受けている飲食店・観光といった業種については、助成率を100%にするといった対策が必要」と指摘する。
デパートや商業施設自体が休業してしまったため、休業手当を支払う必要はないと主張する企業もある。
ビル管理・清掃・警備を請け負う企業は、航空会社から業務委託を受け、空港のラウンジを運営していた。しかしコロナウイルスの感染拡大でラウンジが閉鎖。およそ300人の非正規労働者が仕事を失うこととなった。
週に3~4日、一日6~7時間働いていたというアルバイトの男性(20代)は、「およそ9万円の収入を家計や学費に充てていました。ラウンジが閉鎖になり、非常に困っています。再開の見込みが立たないので、仕方なくスーパーで働き始めました」と話す。
同社は、ラウンジの閉鎖は航空会社が決めたことであり、アルバイトに給与を補償する責任はないとしている。
「(※編集部注:アルバイトの休業は航空会社が)ラウンジの営業を令和2年4月11日から『当面の間』休止することを決定され、その旨、当社に通知されたことによるものです。
そのため、当社は、今般の休業は『使用者の責に帰すべき事由による休業』(労働基準法第26条)、すなわち、当社に休業手当の支払義務が生じる休業には該当しないものと認識しております」
ユニオンは雇用調整助成金を活用して休業手当を支払うよう、企業側と交渉を続ける意向だ。
<取材・文/HBO編集部>