「有事の金」頼みは古い!? 金相場のシナリオを読み解く
新型コロナの感染拡大で世界経済の悪化が確実視されるなか、コロナショックからいち早く抜け出し40年ぶりに史上最高値を更新した金。かねてから戦争や自然災害など「有事」に強いと謳われるが、今回、そんな金の投資法を探った。
かつては、戦争が起きるたびに、安全資産の金は奪い合うように買われたものだが、今回のコロナショックを機に「有事の金」という相場格言は通用しなくなったのか?
「今や、有事だけが金相場の変動要因ではなくなっている。株やドルとの逆相関の関係にあることはよく知られていますが、これらも金の価格を動かすひとつの要因に過ぎないのです」
楽天証券経済研究所の吉田哲氏はこう明かし、典型的なケースを挙げて解説してくれた。
「’17 年に北朝鮮が16回もミサイルを発射し、“有事”のムードが強まったが、この年のNY金先物の騰落率はわずか8%でした。一方、’79 年は、イラン革命、イラン米国大使館人質事件、アフガン侵攻と、“有事”が重なり、NY金先物の騰落率は約132%と金は敏感に有事に反応し、急騰しました。昔は動いた金価格が、なぜ有事に反応しにくくなったのか。ICT技術の発達などにより、投資家間の情報格差がなくなり、情報が持つサプライズ感が低下したのが一因と考えられます」
では、金の価格の変動要因は何なのか。そして、これらの要因からどのように金相場を読めばいいのか。
「現代の金相場は、(1)有事のムード (2)代替資産としての金需要 (3)代替通貨としての金需要 (4)中印の実需 (5)中央銀行の政策と、少なくとも5つの要因の存在を意識することが重要です。つまり、複数の要因が重なったり、相殺したりして、金価格が決定するわけです。例えば、株高・ドル安の局面なら、株高は代替資産の面で下落要因、ドル安は代替通貨の面で上昇要因なので、差し引きすると金価格はほぼ横ばいといった具合です」
「有事の金」頼みは古い!?金相場のシナリオを読み解く
金相場を読むための5つの要素
1
2
ハッシュタグ