コロナの感染拡大が収束してもしなくても金は上昇トレンドに
歯止めがきかないFRBの借金
米国は3か月で3兆円の資金供給を決定。FRBのバランスシートは急拡大している
では今後、金はどう動くのか。マーケットストラテジー・インスティチュート代・亀井幸一郎氏のシナリオはこうだ。
「ワクチンが完成して感染が収束すれば、経済は回復するでしょうが、バランスシートを拡大させたFRBをはじめ、各国中銀がバラ撒いたマネーを回収しなければならないときがくる。だが、回収すれば株価を大きく下落させる。また、ワクチン開発の道筋が見えれば、過剰なマネーが流れ込み株価は上昇する。ただ、企業業績はコロナ前に戻れない……実体経済を伴わない株高なのです。米国の失業者数は夏に向け改善していき、これを先読みした株価はかなり割高な水準に達するはずです。過熱を警戒した投資家は、株と併せて金も買う。通常、株高のときに金は値を下げるが、両方を買う投資家が多数現れ、金は上昇するでしょう。だが、秋頃には実体なき株高は3月のように急落する。金も現金化を急ぐ投資家たちに売られ、3月と同様に一時的に下げる。その後金は本格的な上昇に向かうでしょう」
予想が実現しない場合はどうか。亀井氏は第2のシナリオBも想定済みだ。
「米国ではロックダウンが解除されつつあり、11月の大統領選に向け、景気を回復させたいトランプ大統領も経済活動の再開を後押ししているが、仮にふたたび感染が拡大してしまうと、前述したようなシナリオにはならない。秋冬にかけて第2波による感染が拡大すれば、投資家のマインドを冷やし、株価は下げるでしょう。つまり、第1のシナリオが実現せず、感染の収束まで長期化する第2シナリオになったとしても、金は上昇するのです」
どちらに転んでも上がる金!
【亀井幸一郎氏】マーケットストラテジー・インスティチュート代表
山一証券などを経て、’92年、世界的な金の広報・調査機関ワールド ゴールド カウンシル入社。企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。多くのメディアで幅広く活躍する
【吉田 哲氏】楽天証券経済研究所コモディティーアナリスト
大学卒業後、コモディティ業界に入り、’07年よりコモディティアナリストとして、商品の個別銘柄分析や情報配信を担当。’15年より現職。わかりやすい語り口と鋭い分析に定評。コラムも人気
<取材・文/斎藤武宏 チャート製作/圓谷清和>