明るすぎる時代の美意識~清潔感、女子力、映え<史的ルッキズム研究5>
フェミニンで清潔感のあるパッケージ
この記事が掲載される頃には旧聞になっているかもしれませんが、あるコンビニエンスストアチェーンが販売するプライベートブランド商品のパッケージデザインが話題になっています。話題といっても良い話題ではなく、悪い評判です。絵柄や色彩を抑制したシンプルなパッケージで、フォントも細く、視認性が悪いというのです。カレーの「辛口」と「中辛」を間違えて購入してしまったという苦情から、このデザインの悪さが話題になりました。以前にも他のコンビニチェーンのコーヒーメーカーのデザインが問題になりましたが、今回はさらに批判が拡大し、デザイナーの資質に言及する人もあらわれています。
多くの人が商品デザインに批判を加えるようになったのは、たんに機能性に問題があるというだけでなく、美意識の傾向が変化しているということだと思います。地の色のアイボリーを前面にうちだした「フェミニン」で「清潔感」のあるパッケージは、10年前であれば無条件に受け入れられたかもしれません。しかし現在では、そうではなくなりつつあります。企業や広告業者が考えるような「フェミニン」や「清潔感」のスタイルに、疑問符が付き始めたのかもしれません。
あるいは、もっとうがった見方をすれば、こういうことかもしれません。大企業によって提示された「フェミニン」なデザインは、かつてのように革新的・創造的なものとして受容されるのでなく、むしろ、制度的で押しつけがましいものと受け取られるようになったのではないか。商品を通して再生産される「女子力」や「映える」という価値観は、女性の「女性らしさ」を制度化する主要な舞台となっているわけですが、それが生活に身近な領域であるコンビニエンスストアにまで拡張されようとしたとき、生活文化への重大な侵害と受け取られたのではないか。まあ、これは、考えすぎかもしれません。
無印良品と商品のフェティシズム
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