そんな彼らが作る「トラック飯」は、レトルトカレー、パスタ、目玉焼き、野菜炒め、鍋など想像以上にバリエーション豊かである。
作るもののバリエーションが豊かだと、使われる調理器具も増えてくる。
家電でいうと、前回紹介したように、炊飯器、冷蔵庫、さらには電子レンジまで設置しているドライバーもおり、それらを快適に使えるようにするために、ソーラーパネルで充電できる大型のモバイルバッテリーを積んでいるドライバーまでいる。
その他にも、カセットコンロ、鍋、フライパンなど、本格的に「調理」をするための器具を積んでいる人も少なくない。
そこで1つ懸念されるのが「包丁」の携帯だ。本格自炊派の中には、まな板や包丁を使用する人もいる。そうすると必然的に「車内に刃物を携帯させておく」ことになるのだが、同法の規定によると、「刃体の長さが6センチを超える刃物」が対象になるというが、調理で使用される包丁はこれに該当する。はたしてこの行為は銃刀法違反にならないのか。
今回、その是非を確認するため警視庁に問い合わせたところ、銃刀法は「何人も業務その他正当な理由による場合を除いては、これを携帯してはならない」と定められているため、調理という明確な目的があって携帯することは、銃刀法に当たらないとのことだった。
この考え方は、キャンピングカー、出張でシェフや寿司職人たちが包丁を持ち歩くケースでも同様となる。
無論、トラックドライバー全員が車内で自炊をしているわけではない。料理ができない、面倒臭い、ゴミや洗いモノが出る、匂いが籠る、油が跳ねる、1人前を調理するのが難しい、愛妻弁当があるなどの理由から、自炊をしない人のほうが割合的には多い。筆者自身も長距離を運転してきた1人だが、今まで自炊はしたことがなく、毎度コンビニで軽食を買い、腹4分くらいにして眠気がこないよう調整していた。
いずれにしても、あのキャビンの中は、彼らにとって仕事場であり、自炊をするほど家にも近い空間でもあることを、前回と今回の記事で知っておいていただけると、次回紹介する「キャビンの構造」がいかに彼らトラックドライバーにとって大事なのかが分かりやすくなる。
<取材・文・写真/橋本愛喜>