現金を受け取った関係者はなぜ相次いで暴露してるのか? 河井前法相夫妻逮捕から見る「囚人のジレンマ」

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河井案里の選挙演説を渾身の応援をしていた安倍総理
写真は河井克行前法相のFacebookにアップした動画より

 自民党の河井前法相夫妻が地元の議員ら約100名に約2500万円を提供したとして公職選挙法違反の容疑がかけられ逮捕された。事の発端は、週刊文春で掲載された公職選挙法違反の疑惑だ。本人は否定したものの、その後、複数の議員が現金を受け取ったことを打ち明け始めた。なかには、「2人だけの秘密だよ」と伝えて渡された議員や、ポケット・鞄に現金をねじ込まれた議員もいたそうだ。  

悪行で相手を支配下に

 もしかしたら表に出てこないだけで、実はこのような行為はいたるところで横行しているのかもしれない。主体的だろうと強制的だろうと一度悪い行為に加担させられてしまうと相手に弱みを握られることになり、相手からのお願いを断れなくなって、どんどん泥沼へハマっていく。いつの間にか、両足についた泥が重くて逃げられなくなってしまう。  相手から「YES」を引き出す心理テクニックの「フット・イン・ザ・ドア」(小さいお願いを相手に承諾させて、そこから、だんだん要求を高くしていく。最後に本来自分が相手に望んでいたことを承諾させる)の応用のような手法だ。小さくても相手を悪行へ加担させることで、相手を自分の支配下に置くことができる。

「囚人のジレンマ」の仕組み

 しかし、このような信頼ではなく恐怖によって支えられる人間関係は必ず裏切られる。それを解説したのが、ゲーム理論で有名な「囚人のジレンマ」である。囚人のジレンマとは、以下の例で有名である。  2人の泥棒AとBが逮捕されたが、証拠が少ないため起訴できないでいた。検察官は泥棒に自白をさせるため、泥棒を2部屋にわけて別々に事情聴取をする。そして、検察官はAとBに順番に以下のように伝える。  「もし、お前が先に白状すれば、お前の罪を許してやる。しかし、お前の相棒が先に白状すればお前だけが重罪になる。2人とも黙秘を通せば軽い罰で済むかもしれないが、2人とも白状すれば2人とも重罪となる。」  まとめると以下のようになる。  A(自白) = 無罪 / B(黙秘) = 重罪  B(自白) = 無罪 / A(黙秘) = 重罪  A(自白) = 重罪 / B(自白) = 重罪  B(黙秘) = 軽罪 / A(黙秘) = 軽罪
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議員の「暗黙の了解」はこれだけじゃない?
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