2人の泥棒は、もう一方の出方を予想しながら、自分の行動を選択する必要がある。相手を裏切って自白してしまえば、自分は無罪になることができる。
自分が黙秘をしても、相手に裏切られたら自分だけが重罪になってしまう。
しかし、自分が自白したとしても、相手も自白していたら、2人ともが重罪になってしまう。2人にとっての賢い選択は両者が黙秘をして罪を軽くすることだが、相手が自分だけの利益を考えた場合には
自白することが自分だけの利益を最大にできる手なので、相手が黙秘してくれるか不安は残る。
合理的に考えると、自ら自白したほうが自分にとっての利益を最大化することができる。しかし、両者が自白し続けることができるのならば、
協力して自白したほうが2人とっての利益を最大化することができるのだ。
このような、囚人のジレンマのモデルは、
家電量販店の価格競争や
出店戦略など、
現実世界のいたるところで適用することができる。
今回の事件も同じような状況だ。
事が発覚する前は両者が黙秘を続けていた。それは、どちらが自白してもメリットがないため、両者が黙秘を続けることが将来的に見込まれているので、最適な手だった。
しかし本来、このような駆け引きにおいては、
相手より先に自白してしまうことが合理的な戦略だ。相手が将来的に自白してしまうかもしれない状況においては、先に自白してしまうのが合理的であり、実際に多くの議員が自白をしている。
今後も、次々と自白する議員が増えていくだろう。
今回の事件は、
もしかしたら氷山の一角なのかもしれない。今回明るみになったのは、河井議員の関係者に限った問題だけだ。もしかしたら、ほかの議員の間でも
お互いが黙秘を続けることで絶妙なバランスを保っている関係があるのかもしれない。
【参考資料】
『仕事に使えるゲーム理論』ジェームズ・ミラー
<文/山本マサヤ>